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2018年7月17日

第2回  新たな「考え方」としての“イノベーティブ思考”とは?

前回のコラムでは、VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代へと本格的に突入した今、企業が持続的な成長をめざし、「新規事業」の創出に取り組む上で、有効と考えられる新たな「考え方」と「やり方」をどのような構造として捉えれば良いか、また、それは一体何をさすのか、更には、その大前提として必要となる「企業内起業家」としての“覚悟”について触れてきました。

第2回目となる今回は、その新たな「考え方」と「やり方」について、ご紹介していきます。

“価値づくり”に取り組むために必要なのは、共通言語として“イノベーティブ思考”という新たな「考え方」に基づき、“多分野にまたがる反復型アプローチ”という新たな「やり方」を駆使することであり、その前提として、“個”としての“情熱”を抱き続けることだというのは、前回、ご説明した通りです。

では、この“イノベーティブ思考”とは、一体どのような「考え方」なのでしょうか?

その前に、なぜ“イノベーション思考”ではなく“イノベーティブ思考”となっているかを、ご説明します。
“イノベーション”の意味は「創新普及」、つまり新たな価値を生み出し、それをビジネスの仕組みを通じて社会に広めていく過程を言います。
この意味からすれば、“イノベーション思考”は“イノベーション”を生み出す「考え方」となり、さすがにそんな都合の良いものは無いはずです。

我々が共通言語として持っておく「考え方」としては、“イノベーション”を起こすことが最終的な目的ではあるものの、取り組む上で集中するべきは「新たな価値を生み出す」ことで、そのためには、常に“イノベーティブ”に考えることを習慣化させることが重要です。それは誰もが今日から始められるはずです。 “イノベーティブ”に考えるとは、自身は勿論、自社や業界、世の中が気づいていないであろう面白い切り口や視点、つまり「インサイト」を獲得することそのものです。「これはアイデアのことですか?」とよく聞かれることがありますが、違います。「インサイト」とは、むしろ新たな切り口や視点から、アイデアがあふれ出るもの、と言えるでしょう。

以上のような背景から“イノベーティブ思考”と言っていますが、もう少しブレイクダウンすれば、“システム×デザイン思考”となります。
「システムとして考える」ことと「デザイナーのように考える」ことを適切に組み合わせながら、価値ある「新しい」を探索し、カタチにしていくことを意味します。
「システムとして考える」とは、目的に基づいて全体を俯瞰しながら、構成要素とその繋がりを、多視点から構造化・可視化する思考のことです。これは、ITを始めとした狭義のシステムではなく、広義のシステムとして、対象を観ていきながら、構造的に捉えていく「考え方」です。
また「デザイナーのように考える」とは、常に人間中心に考えること、多様性を活かすこと、どのような状況でも必ず答えがあるという信念を持つこと、たくさん失敗して経験から学ぶこと、を常に心に抱きながら、事に当たる「考え方」 です。
この2つの「考え方」を、お手玉のように組み合わせることで、自分たちの思考の外側にある“解”を意図的に探索することができるのです。

ただしこれは文字通り「考え方」であり、「やり方」ではないということを強く意識することが非常に重要です。なぜなら世の中で先行的に取り組む実践者たちが、この「考え方」に基づいた、さまざまなアプローチ方法、プロセスを示されていますが、それをベストプラクティスの「やり方」として鵜呑みにしてしまうと、必ずと言って良いほど失敗するからです。

では、この“イノベーティブ思考”の「考え方」で、どのような「やり方」を駆使すれば良いのでしょうか?

それは、“多分野にまたがる反復型アプローチ”という方法です。英語では、“Interdisciplinary Approach”と“Iteration”と言い分けられ、どちらも日本語に訳すことがなかなか難しい単語です。意味合いとしては、複数の専門分野が相互作用を起こすようにしていくのが“Interdisciplinary Approach”で、そのためのプロセスは、画一的なものはなく、それぞれの置かれた状況下で、必要と思われるプロセスを、自ら右往左往しながらも考え続けることが”Iteration”です。この「やり方」で積極的に活用していくものが“多様性”です。なぜなら、限られた専門分野の枠に囚われず、意図的に思考の外側にある“解”を掴みにいくために必要だからです。この“多様性”を「やり方」に活用するのは、面倒くさいものではあるものの、うまく活かせば、本当に得たいものを掴むことが出来るからなのです。

これまで、「新規事業」の創出に有効と考えられる「考え方」と「やり方」のエッセンスをご説明してきました。

皆さんの中には「抽象的でよく分からない」とお考えの方もいらっしゃるかも知れません。ただ、ここで繰り返し強調しておきたいのは、一言に「新規事業」といっても、それぞれの置かれた状況は千差万別であり、唯一絶対の正解としての決まった「やり方」、つまり「このステップで検討を進めると新規事業が生まれます」というものは無い、ということです。
むしろ自分たちが「新規事業」を創出する上で、一体何の「目的」から、どの「考え方」に基づき、どのような「やり方」で進めていけば良いかを、頭が割れるほど考えながら突き進むことを、実際に取り組まれる際は強くお薦めします。

「新規事業」の創出には、アイデアを閃くことにあまり拘る必要はありません。閃きよりも、この2回のコラムを通じて触れてきたことを、“自分ゴト”として捉え、進むべき茨の道で、自ら粘り強く考え続ける「思考の持久力」を持つ“気概”こそが、最も重要なのです。

いつか、皆さんと社会にとってこれまでにない新たな価値を創造する、茨の道をご一緒できることを楽しみにしつつ、このコラムを締めたいと思います。

皆さんが「企業内起業家」として第一歩を踏み出され、成功されることを心より祈っております。

筆者の所属する株式会社大塚商会では、“イノベーション”分野において、第一線で教育・研究・実践に取り組む慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科と「中堅・中小企業がこれまでの延長線でない新規事業を創出する考え方とやり方」をテーマとした産学連携共同研究に取り組んでおり、そこでの知見から企業の経営をサポートする「経営支援サービス」のベーシックメニューとしての「新規事業創出支援プログラム」を2015年にリリースしています。

清水 詠氏

<プロフィール>
  • 株式会社 大塚商会 トータルソリューショングループ 経営支援サービス室
  • 経営管理修士(MBA)
  • 日本アクションラーニング協会認定ALコーチ
  • 経営品質協議会認定セルフアセッサー
  • 関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科修了(MBA)
  • 日本ボウズメガネ協会 会長
1996年、株式会社大塚商会入社。流通業を中心としたITシステムを提案する営業を経て、2001年よりマーケティング本部に異動し、B2B・Webサービス・アウトソーシング領域における新規ビジネス企画・開発を10年以上担当。現在は、中堅・中小企業の持続的成長を目指した「経営革新」や「事業戦略立案」の支援と共に、産学連携による共同研究から「新規事業創出支援プログラム」を自ら立ち上げ、多様な業種・業態・規模の企業との協創に基づき、新たな顧客価値・社会的価値を創造する「新規事業創出」支援にも取り組む。その傍ら、心身の鍛錬とセルフマネジメント能力向上のためマラソンやトライアスロンにも勤しんでいる。