ヘルスケアビジネスで成功するマーケティング|新ビジネスの種

ライフサポート展2017

2017年2月15日

第10回 ヘルスケアのIoTビジネスのこれから・ここから

IoTで健康を集積する時代

「健康」を測るウェアラブル機器が集積しているのは、血圧や脈数といった《生体情報》とか、食事や歩数といった《日常行動》、そして天候や環境といった《オープンデータ》です。ただそれらを記録するだけなら、就業「日誌」や業務「日報」となんら性格的には変わりありません。規則に従ってつけてます!というような、くやしさ満載な感じです。でも、ホントにウェアラブル機器が集積したいのは、鍵のかかった「日記」の中身です。きっとそこに綴られるのは、しでかしてしまった悪事の数々や秘密の出来事、うれしかったあの人の言葉だったりするはずです。

最近よく耳にする言葉に、IoT(Internet of Things)があります。あらゆるモノがインターネットにつながるという意味です。さらに、すべてのものがインターネットにつながる、IoE = Internet of Everything へと世の中はもの凄い勢いで変わりつつあります。いま起こっているこれらの動向は、あらゆる《事象》をインターネットにつなげると解釈できます。IT技術あっての、つまりシーズ(Seeds)側の技術革新があっての発想が起点となっています。その代表的なものが、先進技術の粋を集めたウェアラブル機器だったりするわけです。

ときに、私は問われます。たとえば、こんな課題を昨年いただきました。慶應SDM(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)の白坂成功先生より、「ヘルスケアマーケティングの立場から、IoTについて話してもらえないでしょうか」。経済産業省絡みの事業構想に関する講演依頼でした。そこで、私はマーケティングコミュニケーションの専門家の立場から、IoTの新しい解釈として、IoT = Internet of Thinks(あらゆるコトがインターネットにつながる)を提唱しました。Things《事象》でなく、あらゆるThinks《心象》がインターネットにつながるという解釈を加えることによって、新たなビジネス開発のベクトルが見えてこないだろうかと語りかけました。まさしくこのアプローチこそ、生活者ニーズ(Needs)から発想するマーケティングの基本原理に立脚するものです。

私のようなマーケティングコミュニケーションの専門家がアプローチするのは、ひとの消費行動です。消費に向けての行動変容、特にその行動を左右する制御因子を知るにあたっては、“事象を診る”だけでなく、“心象を観る”ことが大切とされます。《心象》は、マーケティング戦略においては、インサイト(顕在化しているニーズ+ 潜在化しているニーズ)の概念に近いものと理解していいでしょう。この心象探索こそ、ひとの消費行動の制御装置を操作する“何のために”“誰のために”のパスワードを導き出すことにもつながります。

心象探索とIoTビジネス

ウェアラブル機器がインターネット技術を介し、生体測定情報と行動計測情報とオープンデータをリンクさせ、すべてのものがヘルスケアにつながるInternet of Things。これに、関心事や指向(志向・嗜好・思考)性ほか、さまざまな欲求といった消費者データをかませることで、Internet of Thinksとなります。何を達成したくて健康行動をとるのか、何が原因となって目の前の健康行動を阻んだのかを手に取るように集積するのが、IoT = Internet of Things とInternet of Thinks の両面を成す、“これからのIoT”に求められる集積回路となります。

執筆者:西根英一(株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ 代表取締役社長、マッキャン・ワールドグループ 顧問、事業構想大学院大学事業構想研究所 客員教授)
編集人・編集責任者:武坂

西根英一氏

<プロフィール>
マーケティングデザイン開発とコミュニケーションデザイン設計の専門家。商品開発、サービス創造をはじめ、市場戦略、販路開拓、顧客獲得のための“精緻な設計図”を描き、広告プロモーション、戦略PRを最適化する。近著に、『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』(宣伝会議)。 大塚グループ、電通グループを経て、マッキャン・ワールドグループ。大手企業、全国の中小企業のヘルスケアビジネスをマーケティング戦略面からコンサルテーション、地方自治体の地域ヘルスプロモーションを支援する。各種研究機関の役員、委員も務める。大学教員(専門:ヘルスケアマーケティング、若者マーケット)。講演登壇、番組出演、教育研修の機会多数。