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2014年02月18日

センサ・測定機器が主導で拡大する健康管理&ライフログビジネス~介護・医療分野とも連動すればビジネスチャンスは無限に!?~

昨今、体重・運動・食事など体の状態や生活習慣を測定・記録する「健康系ライフログ」ビジネスが盛り上がりを見せている。

従来、体重や食事、運動等をWEB上等に記載する健康管理サービスは、2008年の特定健診・特定保健指導の開始をきっかけにあらゆる業種が参入したものの、法人向け・個人向けともに、ごく一部を除いて不振が続いていた。しかし、ここにきて、状況が変わってきている。スマートフォンという情報処理容量の大きな機器が普及し、また、目的が体重管理等から睡眠状態、生理周期、ランニング等、多岐に広がり、さらには、お洒落な測定端末等が投入された結果、若年層をはじめとした新たな層を取り込むことに成功し、拡大している

現時点では、自ら健康系ライフログを活用するシニア層はまだまだ少ないかもしれない。しかし、本稿でも繰り返し伝えている、介護や医療の在宅化が推進されれば生涯にわたるシームレスな健康・治療・介護情報の共有が不可欠となる。将来的には、医療・介護分野でもこれらの情報を健診データやカルテ、レセプト等とも連動させて仕組みとして活用していくことも考えられる。特に、ITや機器に慣れ親しんだ層が今後高齢化していくにつれて、より本格化していくものと考えられる。

今月は、健康系ライフログビジネスの状況を整理し、主に介護分野における今後の活用のあり方を考える。

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1.盛り上がる「健康の可視化」ビジネス
~セルフチェック機器は盛況、それにつれて健康管理サービスも上向きに?!~

歩数計(いわゆる万歩計)や活動量計は、手軽な生活習慣病予防やダイエット対策グッズとして、特に特定健診・特定保健指導の開始前頃から売り上げが伸びていた。ただし、あくまで健康意識の高い女性や中高年層が主に購入していたものである。

それが、昨今では、新たな用途やコンセプトの商品が投入され、従来とは異なる購買層を獲得している。2012年には、睡眠計(オムロン)が販売開始され、睡眠に悩む層の注目を集めた。さらに、2013年には、リストバンド型活動量計「UP by JAWBON(Jawbone)」、「NIKE+FuelBand SE(NIKE)」や髪留め型活動量計「カラダフィット(MTI)」等が相次いで発売された。それぞれ、歩数などの運動量、消費カロリー、運動負荷、睡眠の深さ等をほぼ自動的に測定し、いずれも簡単にデータ転送ができ、スマートフォン上のアプリで管理する。デザインと操作の簡易性の両立、睡眠・フィットネス等への訴求によって、若年男性など、これまで健康産業のメインターゲット以外の層にもユーザーを広げている。

なお、このようにセンサ、測定機器の販売増に伴って、連動するアプリの利用が増えるのは当然である一方、単独の健康管理サイトの人気が高まっているわけではない。冒頭で前述した様に「ルナルナ(MTI)」等一部のサイトを除くと、法人・個人向けともに、各社とも収益的に厳しい状況が続いているという。

2.健康系ライフログと介護・医学分野との連動による生涯健康記録

図 健康系ライフログビジネスの構成要素

図 健康系ライフログビジネスの構成要素 UP by JAWBON NIKE+FuelBand SE カラダフィット スマートコンタクトレンズ hitoe みまもりほっとラインipot クラウド連携型ロボットプラットフォーム 高齢者見守りシステム 処方せん送信 スマートフォンを用いた調剤情報提供

・センサ、測定機器
生活習慣を計測するものには、従来、万歩計・歩数計・活動量計など運動量や活動量を測るもの、睡眠計など入眠・起床、睡眠時の覚醒状態を測るもの等がある(食事については、画像を送付する場合もある)。心身の状態を測るものには、体脂肪計・体重体組成計など体重や体脂肪糖を測るもの、体温・血圧計、最近では尿糖や血糖を測るもの等が登場している。これらの機能が複合して、軽量でファッショナブルになったのがウエアラブル機器である。 他にも、自律神経や疲労の状態を測定するもの、味覚や嗅覚、触覚など五感をセンシングできるようなものが現れ始めている。今後は、これらについても、個人向けのセルフチェック機器が普及して、他の機器とも連動できるようになれば、様々な面から生活の質を向上させるための方策が考えられる。
また、ランニングなど趣味に結びついた機能が市場を喚起する例がみられ、多様な競技・運動に特化した測定機器への潜在需要も大きいと考えられる。
・管理ソフト/アプリケーション
現時点でも、上記の様なセンサ・測定端末から無線や有線で転送するものと、WEB上のソフト/アプリケーションのフォーマットに手で入力するものが混在している。基本的には、個人の情報を記録し、時系列での比較や他項目との相関関係等の分析が自動的になされたり、その結果から、標準を超える範囲に達した場合に本人・家族等に警告を発したりする機能を備えたものもある。ただ、血圧や心拍といった基本的な情報からも、様々な病態や心身の状態を推定するアルゴリズムも医学的理論とともに進化しつつあり、将来的には、分析手法の進化とも相まって、より多くのことが判定できるようになると考えられる。

一方、介護・医療分野においては、現在、保険者等を中心に、カルテ、レセプト、健診データ、ケア記録等の電子化・データベース化・共有化等が進展しつつある。これらと上記の個人ベースの膨大な健康情報・健康履歴が連動できれば、運動・休養・食事といういわば介入(IN)や、病気や不調の予兆が現れる心拍・血糖等ともひもづけて分析することが可能となる。人類全体での疫学的なメリットはもちろん、個人にとってもより適切かつ有効な予防(疾病・要介護)・治療・ケアに資する情報やサービスの提供にもつながることが予想される。遺伝子情報が加わればさらに予防・治療・ケア精度が高まるだろう。

折しも、国では、介護、医療の在宅化が進められているが、個人の治療・介護の質の観点から、まず、医療と介護の記録がつながることが必須であり、次いで、生涯にわたる健康状態・治療・ケア等の記録がシームレスに連携していることが求められる。そして、繰り返しになるが、健診や疾病・ケアの記録といった結果だけではなく、どのようなライフスタイル、健康行動をとったのかという原因もセットで論じられるべきである。

このようなビックデータが活用できるようになる時代は意外と早く来るかもしれない。そうなると、健康や医療関連の機器類だけでなく、その基盤となるシステムや通信、さらには、それらの情報を活用・連動した健康サービスなど、幅広い分野の企業においてビジネスチャンスが生まれる余地がある。

編集人:井村 編集責任者:前場
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社