新ビジネスの種

  • HOME > 
  • 新ビジネスの種 > 
  • 2018年の診療報酬と介護報酬ダブル改定でいったい何が変わるのか~進む医療と福祉の一体化、柱は、地域包括ケアシステム・病院機能再編・地域医療構想~

ライフサポート展2017

2016年2月16日

2018年の診療報酬と介護報酬ダブル改定でいったい何が変わるのか~進む医療と福祉の一体化、柱は、地域包括ケアシステム・病院機能再編・地域医療構想~

従来から、国においては、社会保障費の低減等を主な目的として、施設から在宅への流れを推進し、そのための報酬改定による誘導や医療と介護の連携、地域単位でのケア等を進めてきた。

医療・介護ともに、これまでも計画の見直しや報酬の改定は繰り返されてきたものの、2018(平成30)年度には、介護報酬・診療報酬の同時改定のみならず、第7次医療計画・第7期介護保険事業(支援)計画・第3期医療費適正化計画がスタートする。つまり、今後の医療・介護施策において極めて大きな節目となる。

これはいったい医療・介護ニーズ、ひいては関連ビジネスにどのような影響を及ぼすのか。今月と翌月にわたって、2018年の医療・介護制度改革について検討する。

※記事をご覧いただく場合は「詳しく見る▼」ボタンをクリックしてください。

1.2018年からの改革、改定は今までと何が違うのか

結論から言うと、実は、施策の方向性自体は、従来のものから大きな変更はない。施設から在宅へ、地域へというものである。しかし、ここまでかけて上記に取り組んできたものの、目標に対しては、まだまだ成果が物足りないという認識のもと、抜本的な改革を行い、さらに徹底するためのしくみを構築するのが2018年の改定である。

ところで、施策の中で目標年度とされている2025年といえば、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が、要介護になる確率が高まる後期高齢者(75歳以上)に移行してくる年である。現在でさえ、社会保障関係費(社会保障給付の国庫負担)は31兆円を超え、国家予算(約96兆円)の約3分の1に達している。しかし、2025年には後期高齢者数が2015年(約1600万人)の約4割増に達し、介護費用は現状の約10兆円から21兆円へ、さらに深刻なのは、専門職も38万人が不足すると推定されている。つまり、現状のまま進むと、予算も専門職も足りず、医療も介護も、ひいては国家財政もパンクしてしまう、ということである。何とかして、限られた医療・介護資源の中で、効率を高め、質も維持・向上させながら、乗り切る必要がある。

以下、より詳しく、目標(2025年のあるべき姿)から見ていく。

医療介護総合確保促進会議での検討結果がふまえられた「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」から方向性を把握すると以下の様になる。

最終的には、「利用者の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し、国民一人一人の自立と尊厳を支えるケアを将来にわたって持続的に実現していく」ことが目的とされており、以下の様な背景と方針が示されている。

「医療ニーズについては、病気と共存しながら、生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まってきている。」

→(疾病や傷病の治療といった急性期よりも)慢性疾患や機能の低下を抱えていることを前提に、むしろ、それらとうまく付き合いながらも生活の質を保つ支援に重点を置く

「介護ニーズについても、医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者が増加するなど、医療及び介護の連携の必要性はこれまで以上に高まってきている。」

→後期高齢者の増加に伴って、疾病を抱える人や認知症、要介護度の高い人が現在以上に増加する。そこで、一層の情報共有を進め、整合性の高い仕組みの構築を徹底することで、医療と介護をさらに一体的に提供していく

「医療保険制度及び介護保険制度については、給付と負担のバランスを図りつつ、両制度の持続可能性を確保していくことが重要である。」

→これまで以上に、介護報酬を抑制し、サービスの対象者を精査する等して、給付を効率的にスリム化するとともに、現役世代・高齢者世代ともに保険料等の負担を増やしてもらう

「医療及び介護の提供体制については、ニーズに見合ったサービスが切れ目なく、かつ、効率的に提供されているかどうかという観点から再点検していく必要がある。」「地域の高齢化の実状に応じて、安心して暮らせる住まいの確保や自立を支える生活支援、疾病予防・介護予防等との連携も必要である。」

→事業主体ごとに提供されがちであった各サービスを、医療の急性期、慢性期、リハビリ、生活支援、疾病予防・介護予防、緩和ケア等の一連の医療・介護等ニーズにあわせて、利用者のライフスタイルや経済状態、要望もふまえながら、過不足なくタイムリーに提供していく。

注)「」内:原文より抽出、→:三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる補足

2.めざす医療・介護とはどういう姿なのか?

国の資料で示されている、サービス提供体制の観点から見た医療と介護のあるべき姿は図表1の様にイメージされている。この背景となっている方針は、『効率的かつ質の高い医療提供体制の構築』と『地域包括ケアシステムの構築』の2つである。

まず、『効率的かつ質の高い医療提供体制の構築』の具体的内容をみてみる。

従来の病床機能は一般病床・療養病床であったのが、医療機能として、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4区分に分け、病床はそれらに紐づけされる形となる。また、今後は、医療機能報告を行うことが義務付けられる。

また、これまでも都道府県による医療計画等が策定されていたが、やや実効性に欠けていたこともあって、地域医療構想(ビジョン)策定によって、提供体制をより強化する。しかも、二次医療圏(病床数等を基に、地理的なつながりや交通事情等を考慮して決められる複数市町村程度のエリア)の単位で将来像を描くことになっている。地域性を反映させながら資源を有効活用するには、市区町村では小さすぎ、都道府県では大きすぎるという判断である。

○病床の機能分化・連携
・各医療機関が医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)を都道府県に報告*
・都道府県は、報告制度等を活用し、各医療機能の必要量等を含む地域の医療提供体制の将来のあるべき姿(地域医療構想(ビジョン))を策定
・地域医療構想(ビジョン)は、医療機関の自主的な取組と医療機関相互の協議により推進することを基本。なお、医療機関相互の協議の合意に従わない医療機関が現れた場合等には必要な対処措置を講ずる
○有床診療所等の役割の位置づけ
・病床機能報告制度及び地域医療構想(ビジョン)の導入を踏まえ、国、地方公共団体、病院、国民(患者)と併せ、有床診療所の役割・責務について、医療法に位置づける。
○在宅医療の推進、介護との連携

注)・太字強調:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
・*:医療機能の方向性、設備・人員配置の状況、医療内容等を、都道府県に毎年報告

出所)厚生労働省「地域における医療及び介護の総合的な確保について(参考資料)」

同じく、『地域包括ケアシステムの構築』とは、下記をさしている。

○地域支援事業*1の充実
①在宅医療・介護連携の推進
②認知症施策の推進
③地域ケア会議*2の推進
④生活支援サービス*3の充実・強化
*前回改正による24時間対応の定期巡回サービスをはじめ、介護サービスの充実・普及を推進
○全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業に移行し、多様化
○特別養護老人ホームの「新規」入所者を、原則、要介護3以上に重点化

注)・*1~3:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

*1:市町村が主体となって進める介護予防等の事業。ただし、現在、介護保険で提供されている訪問介護、デイサービス、リハビリテーション等とは異なる。その介護保険の介護予防事業も、2018年度までに地域支援事業への移行が義務付けられている。(本稿2013年9月17日号社会保障制度改革『要支援は介護保険外、施設から在宅へ』~要支援向けサービスの単価下落?~参照)

*2:地域包括支援センター等が主催し、介護だけではなく医療まで含めた多職種が参画して、高齢者への支援をコーディネイトしたり、地域の課題を抽出し、解決策を検討する会議体

*3:見守り、外出支援、買い物、調理、掃除などの家事支援等。ボランティア、NPO、民間企業、社会福祉法人等の多様な事業主体が想定されている。

出所)厚生労働省「地域における医療及び介護の総合的な確保について(参考資料)」

図表1を見ると、「住まい」で疾病等を発症すると、その後は、「急性期」→「回復期」→「在宅・施設」と人が流れてくる構図になっている。つまり、どこが不足しても滞ってしまうため、上記2つのコンセプトは両輪と言われている。特に、最終段階の受け皿となる在宅医療・介護での提供体制の充実が先んじて進まないと、川上の医療部分の機能分化が進み難くなると考えられる。

図表1 医療・介護サービスの提供体制改革後の姿(サービス提供体制から)

医療・介護サービスの提供体制改革後の姿

出所)医療介護総合確保促進会議資料「地域における医療及び介護の総合的な確保について(参考資料)

つまりは、同じ一人の高齢者の体調や症状が、時々によって、急性期の医療から在宅医療・介護が必要な状態まで変化するため、それぞれの段階に応じたサービスを提供する、しかも、切れ目がないように、というものである。

とはいっても、前述の様に、医療も介護も予算や専門職が限られている。それをいかに効率的に使うか考えると、まずは、より細かく利用者の体調や症状に応じたニーズを区分して、それぞれに対応したサービスを用意する、換言すると、ICT(情報通信技術)等も活用しながら、必要量と提供量をより詳細に精査していく、あるいは、サービス対象や提供主体をも最適なものに変えていくことが求められる。

そして、具体的に運営するとなると、データの共有だけではニーズに応じたシームレスなサービスの提供は難しいため、より横断的な調整が必要となる。これを行うのが、地域包括支援センター等が主催する地域ケア会議である。従来から同様な機能はあったものの、サービス調整会議や担当者会議等を階層化し、整合性を持たせ、さらには、現状の月に数回レベルから開催頻度を高め、各地域にコーディネイタを設置するなど、より徹底されたものとなる見込みである。

そして、何度も繰り返されているのが、「医療・介護サービス提供体制の一体的な確保」や「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」といった、医療と介護の一体的提供、いや、一体化を強調する文言である。かつては“保健・医療・福祉の連携”といった文言に始まり、その後、何十年間も、各分野の連携が重要視され、時々の施策に都度々反映されてきた。しかし、各ケースの情報共有程度では済まなくなってきたため、医療も介護も人材レベルの共有までしていく段階に進もうとしている。例えば、看護師は、これまで以上に、在宅医療や介護施設での勤務が増加する見込みである。詳細は次号で後述するが、医療計画と介護保険事業支援計画は、従来の様に別々に作成されるのではなく、それぞれの必要量や提供目標量を相関させながら検討される見込みである。医療計画・地域医療構想においても、在宅医療の必要量の推計や、目標達成のための施策等の推進体制について記載するなど、在宅医療に関する内容が増やされる。

そうはいっても、医療法人と社会福祉法人、診療報酬と介護報酬といったしくみの垣根は残る。経営や財源が分かれていては絵に描いた餅となるリスクがある。それに対して、日本再興戦略(改定2014年)において、「複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」を創設する」とされており、今後の検討が待たれる。

さらには、今回、他に強調されている視点としては、「地域完結」がある。これまでも、要支援など比較的軽度の人については、自治体でケアする方向であったが、現在、介護保険下で提供されている介護予防事業も2018年度までには自治体に移行する予定である他、地域ケアシステムにしても、各地域で人材や財源の確保や、サービスの調整、計画作成等までを地域で進めることになっている。

地域の現状(高齢化等の人口動態、医療・介護ニーズの程度、医療・介護資源等)をふまえた地域の基準や目標を持って、地域で人的資源を確保していく、いわば、「まちづくり」と一体になった施策に移行しつつある。

しかし、地域の創意工夫を活かせる、ということは、地域の事情-例えば、財政状況やマンパワー等が反映されてしまい、格差を生むということと表裏一体である(本稿2013年9月17日号社会保障制度改革『要支援は介護保険外、施設から在宅へ』~要支援向けサービスの単価下落?~参照)。

次号では、医療・介護の制度改正から考えられるビジネスについて検討する。

編集人・編集責任者:武坂
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社