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2013年3月19日

高齢者在宅介護における実態調査

はじめに | 第1章 調査の概要 | 第2章 在宅介護に関する実態調査 | 第3章 まとめ

はじめに

団塊の世代が60歳を超えはじめ、いよいよ高齢化社会が加速してきている。そうしたなか、働き手の不足など、少子高齢化を背景にした社会問題が様々な分野で表面化しはじめている。なかでも、高齢者の生活と直結する介護分野は、老老介護の問題や介護サービス提供者の人材不足、負担増など、喫緊の課題が山積している。

しかし一方で、例えばICT活用による高齢者の安心見守りなど、様々な業界の多彩な企業による「高齢者支援のためのサービス開発」といった取組が進められている。

ところが、製品やサービス開発企業などからすると、医療・介護分野との接点が少ないため、具体的なニーズや課題を把握できず、具体的な製品・サービス開発につなげられていないというのが現実である。つまり、「ニーズ」と「シーズ」の乖離である。ニーズ視点の欠けた製品・サービス開発からは本当に現場で求められるものは生まれないと言える。

以上の背景を踏まえ、公益財団法人大阪市都市型産業振興センターでは、NPO法人MVCメディカルベンチャー会議(医師ネットワークを保有)及びスマイル・プラス株式会社(介護分野従事者ネットワークを保有)と連携し、経済産業省「平成24年度サービス産業強化事業費補助金(地域ヘルスケア構築推進事業)」により「ライフイノベーションフォーラム構築事業」を実施しており、高齢者支援のための新たなサービスの開発促進を目的として、様々なプログラムに取り組んでいる。

本調査はその「ライフイノベーションフォーラム構築事業」のプログラムの一環として実施されているもので、介護現場の課題やニーズを明らかにすることで製品・サービス開発の一助とすることを目的としている。

なお、介護サービスには、要介護者が自身の自宅で生活をしながら各種介護サービスを受ける形態の在宅介護型と、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設等に入所して受ける施設介護型があるが、本調査では、対象を在宅介護型にしぼっている。理由は、第1章で詳述するが、医療制度改革による地域包括ケアの推進など、今後、在宅介護に求められる役割が大きいからであり、新たなサービスの創出が求められているからである。

最後に、本調査報告書の構成であるが、第1章で本調査の実施背景および概要を述べ、第2章において在宅介護に関する実態調査として調査結果を提示している。そして、第3章では、まとめとともに今後の在宅介護における課題解決について考察している。

第1章 調査の概要

1-1.調査の背景と目的

近年、わが国では高齢化社会を迎え、世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでいる(図表1-1)。平成23年10月1日現在、65歳以上の高齢者人口は過去最高の2,975万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も23.3%となった。さらに今後も少子高齢化は加速していくとみられ、平成37年には約3人に1人は65歳以上という状況が予測されている。

図表1-1)高齢者人口の割合

高齢者人口の割合の遷移

総務省「高齢者人口の現状と将来」参照

そうした高齢化の進展により、医療費負担の増大や労働人口の減少など様々なレベルで露見されるようになった課題が社会問題化しており、早期の解決が求められている。

なかでも、社会全体の働き手不足が介護分野にもたらす影響は大きく、介護事業所に従事するサービス提供者の不足が恒常的な問題となっているほか、現場で働く介護職員の負担の大きさも課題となっている。

そこで期待されているのが、現場の課題を解決する新たなサービスの開発であり、製品の開発である。

大阪市をはじめとした近畿圏には、多彩なものづくり企業やサービス開発企業が集積しており、当財団の新産業創造推進室を中心として健康分野でのサービス展開をめざす企業のサービス・製品開発のサポートを行っているが、その活動のなかで、特に介護分野に関しては、決定的に現場の“課題”や“ニーズ”に関する情報が不足していると言える。

その理由の一つとして、介護現場及びその従事者と製品・サービス開発企業に接点がないことが挙げられる。両者が交流し連携する機会がないため、企業にとっては製品・サービス開発を行ううえでのニーズの把握が難しく、効果的なサービス創出につながりにくいのである。

本調査を実施する目的は、そうした製品・サービス開発企業にとって見えにくかった課題を、介護現場の声を拾うことで明らかにし、そこからニーズの所在を考察するというところにある。そして、そのニーズをもとに、例えば「介護現場の負担を軽くする製品の開発」や「サービスのクオリティ向上につなげるためのICT活用」など、介護現場の課題解決につながる新たなサービスの創出が促進されることをめざしている。

1-2.調査概要

1-2-1.対象分野の選定について

介護分野のサービスには、大きく分けて、要介護者が自身の自宅で生活をしながら各種介護サービスを受ける「在宅介護型」と、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設などに入所する「施設介護型」がある。

両者とも、今後の高齢化社会を見据えたときに重要な役割を持つが、医療制度改革による地域包括ケアの推進など、在宅介護に期待される役割はさらに大きくなることが予想される。加えて、近畿圏における高齢化に伴う社会課題の特徴の一つとして、“一人暮らし高齢者率の割合が高い”ということが挙げられ、事業所と地域が一体となった包括的な在宅介護サービスの構築が求められている。

また、在宅介護の特徴として、通常の暮らしの中で介護が行われるということが挙げられる。つまり、介護現場である家庭では十分な機器や介護職員の手厚いケアが期待できないため、それに代わる機器や新たなサービスが期待されていることになる。これは製品・サービス開発側の視点からすると、参入の機会が多いということであり、市場性が高いということである。

以上の理由から、本調査では「在宅介護」を対象分野として設定し、現場ではどのような課題があり、どういった製品やサービスが解決につながるのかを考察していく。

図表1-2)介護関連製品・サービス開発の現状

介護関連製品・サービス開発の現状

1-2―2.調査対象

本調査では、前述した通り、対象分野は「在宅介護」に設定しているが、具体的に調査を実施する対象は、そのなかでも「要介護者の家族等の身内である一般者」と「在宅介護をサポートしている職業者」としている。

また、在宅介護にも様々なサービス形態、利用形態があり多岐にわたるため、在宅介護従事者がどのような世代、職業、立場であるかを含め、幅広い対象者を抽出し、調査を行った。

<参考>網掛けの介護サービスの従事者を、今回の主な実態調査対象とする。
図表1-3)主な実態調査対象
主に自宅で生活しながら受けるサービス 主に施設等に入所(入居)して受けるサービス
ケアプラン作成 施設・居住系のサービス
自宅で利用できるサービス   介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  訪問介護 地域密着型介護老人福祉施設
入所者生活介護(定員29人以下の特別養護老人ホーム)
夜間対応型訪問介護
訪問入浴介護
訪問看護 介護老人保健施設
訪問リハビリテーション 介護療養型医療施設
居宅療養管理指導 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
通いで利用できるサービス 特定施設入居者生活介護
(介護付きの有料老人ホーム等)
  通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション 地域密着型特定施設入居者生活介護(定員29名以下で介護付きの有料老人ホーム等)
認知症対応型通所介護
施設に短期間入所するサービス 通い、訪問、泊まりの複合的なサービス
  短期入所生活介護   ※小規模多機能型居宅介護
短期入所療養介護  
福祉用具・住宅改修
  福祉用具貸与
福祉用具購入
住宅改修

大阪市介護保険制度のご案内「介護保険で利用できるサービス一覧」(2011)をもとに作成

1―3. 調査の実施方法

今回の調査では、参加団体であるスマイル・プラス株式会社が運営する「介護レク広場」を活用し、ウェブアンケートにより実施した。

「介護レク広場」は、デイサービス等の施設で活用されている高齢者用レクリエーション素材の無料ダウンロードサイトで、約3万人の会員を有している。また、利用者の80%が介護従事者であり、ヘルパーや介護福祉士など要介護者と関わる介護従事者はもちろんのこと、施設の管理・運営を行う介護事業者など、様々な立場の方が登録しているのが特徴で、今回の調査が意図する在宅介護に従事する幅広い層から意見を集約するという点で、最適な媒体だと言える。

また、今回の調査は、定量的なデータを取得することにより現場の実態を明らかにするということを狙いとしているため、ウェブアンケートにより調査を実施することにした。同サイトの登録会員であれば、ウェブサイトの利用に抵抗がなく、高い回答率が見込めると思われる。

具体的な調査方法であるが、調査対象の選定としては、「介護レク広場」に登録している会員3万人のうち、プレアンケートにて回答を了承した100名を対象に実施しており、詳細な属性などは後述する。

また、プレアンケートを実施することで、回答者の属性(年齢、性別、職業)を事前に把握し、偏りの少ないデータ収集を行った。

1-4.ニーズ調査内容

調査項目の選定にあたっては、本事業の定例会議である「ライフイノベーションフォーラム構築事業 事業化検討会議」に参加した企業・団体および講師の意見を取り入れて検討を行った。そして、その中で出てきた項目が以下である。排泄を含む生活全般にわたる在宅介護ならではの課題や医療への期待、さらには介護現場の機械化とITの用途等にも触れている。

  1. 要介護者の年代、状態について
  2. 食事について
  3. 入浴・排泄介助について
  4. 徘徊について
  5. 住まいについて
  6. 医療分野への期待について
  7. 機械化、ITについて
  8. 在宅介護全般について

これらの項目を中心に、選択式だけではなく自由回答欄も含めた合計25項目の質問項目を設定し、具体的な質問項目の選定を行った(詳細は第2章より)。

1-5.調査期間

  1. ライフイノベーションフォーラム構築事業の実施
    2012年11月15日(木)フォーラム事業化の検討会議(第1回)
    2012年12月13日(木)フォーラム事業化の検討会議(第2回)
  2. 介護事業者向けアンケートの実施
    2012年11月21日(水)介護レク広場会員に向けたプレアンケートの実施
    2012年12月11日(火)~12月21日(金) 本アンケートの実施
  3. 調査結果の考察・まとめ
    2013年1月7日~31日

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