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水処理技術を生かし、人々の健康と安全を守る新事業開発に挑む

PROJECT
パッケージフレッシュプロジェクト
COMPANY
ダイヤアクアソリューションズ株式会社

大竹様

総合的な水処理サービスを展開するダイヤアクアソリューションズ株式会社。研究技術センター主任・大竹弘明氏に、新規事業にかける想いと今後のビジョンについて伺った。

御社は総合的な水処理サービス企業とのことですが、具体的な事業内容と新規事業開発に着手された経緯についてお聞かせください。

当社は1970年の創業以来、三菱ガス化学が開発したユニークな水処理剤や環境関連薬剤を用いて、空調や環境システムにおけるさまざまな障害や問題を解決してきました。なかでも、当社の主要業務は、オフィスや店舗、ビル・工場などに設置される水冷式パッケージエアコン(業務用エアコン)の熱源として使用される冷却水、冷・温水のソリューションビジネスです。

冷却塔と呼ばれる室外機で冷やした冷却水や冷水を配管によって室内に循環させるというものですが、水冷式は空冷式と比べて冷却効率に優れているという利点がある一方、冷却塔の水が濃縮することで発生するカルシウムやシリカなどの析出抑制、冷却塔に発生するスライムやレジオネラ菌の抑制・除菌、機器の洗浄が不可欠です。そこで、水質分析や水処理薬剤を通し、メンテナンスを最適化するビジネスを提供してきました。

ところが近年、高いエネルギー効率を実現した空冷式パッケージエアコンが登場し、段々と水冷式の市場がシュリンクしてきたのです。そうした状況の中、当社においても将来に渡り業績を伸ばしていくためには新たな事業分野の確立が必要となり、約5年前に新規事業立ち上げに向けた「企画開発」の組織を発足。これまで培った水処理技術とノウハウを発揮できる、新しいマーケットの開拓に取り組み始めました。

大竹様

今回、認定プロジェクトとなった空調機清掃用除菌剤「パッケージフレッシュ」は、どのように誕生したのですか?

まず、新規事業の可能性を探るにあたって当社が着目したのは、エアコンユニットのなかでもこれまで守備範囲外だった「室内機」でした。

新規開拓といっても、これまでとはまったく異なる分野ではノウハウもないし、焦点が定まらずあまりに非効率。しかし、室外機があるところには必ず室内機があるわけですから、これまで培ってきた販路をそのまま生かし、なおかつ当社の水処理技術とノウハウを最大限に活用できると考えたからです。 そして、その動きを加速させてくれたのが、ある大手学習塾さんからの相談でした。

相談内容は「エアコンのカビの臭いを何とかしたい」というもの。 当社としてもエアコン室内機をターゲットに新事業の可能性を模索していたところでしたので、市場のニーズとピタリとマッチしていることを実感し、エアコン内の除菌・カビ臭除去というテーマで開発がスタートしました。

大竹様

エアコン内のカビや臭いといった“悩み”はずいぶん昔からあったと思いますが、なぜ今のタイミングなのでしょうか?

実は昔から除菌のための薬剤開発は行われてきましたが、これまで完璧なものが誕生してこなかったのです。その理由は、薬剤としての効果を高めると人体や機器にも影響がおよび、人体や機器への影響を少なくすると除菌効果が見込めないというジレンマに陥ったためでした。 効果と安全性、このふたつのせめぎ合いを解決する手段がなく、長い間放置されていたといっても過言ではありません。そうした膠着状況に踏み込んでいったのが、今回の当社の挑戦と言えるでしょう。

私たち研究開発のメンバーは、いろんな原料を取り寄せ調合していくなかで、空調や環境システムにおけるさまざまな障害や問題を解決してきた歴史と実績があります。そこで培ってきた情報力やノウハウをもとに、医療現場で手指の殺菌などに使われている安全性の高い第4級アンモニウム塩に着目。殺菌効果はあるもののすぐに失活してしまうという欠点を克服するために、持続性を付加する原料の模索や調合の研究を行いました。 さらに、機器に影響を与える腐食性を抑えつつ、カビの菌糸に働きかける効果を追求し、表面的な除菌ではなく根本から問題を解決する薬剤を開発。また、キレイな空調を維持するため、空気中の湿気と反応してカビの生育を抑制するシート型薬剤もラインナップに加え誕生したのが空調機清掃用除菌剤「パッケージフレッシュ」なのです。

御社の研究開発部門は東京にありますが、大阪トップランナー育成事業に応募しようと思われたきっかけや目的は?

当社には東京、福岡と並び、大阪にも営業拠点がありまして、大阪の営業メンバーから勧められたのがきっかけです。

完成した「パッケージフレッシュ」を学習塾約100教室に導入後、2018年4月より本格的に販売をスタートさせましたが、実は、次の一手に頭を悩ませていました。 我々のような環境関連のビジネスは一般的に立ち上げから軌道に乗るまで十数年かかることもあり、当社としても新たな事業を飛躍的に伸ばしていくためのノウハウがなく、どうすればいいのか立ち往生していたのです。

そんな時に大阪営業のメンバーから勧められたのが、「認定を受けることができれば営業がやりやすくなるのではないか」ということでした。 確かに、既存の販路をベースにするといっても当社にとっては新たに進出していく分野であり、新規の販路拡大を含め分からないことが山ほどあります。認定プロジェクトに選ばれれば専門的なサポートを受けられるので、その点を大いに期待しましたね。自分たちでは分からないことを外部からサポートしてもらうことで、事業を軌道に乗せる期間を少しでも短縮できると考えたのが、応募した最大の目的です。

具体的には、どんな課題に対しどんなサポートがありましたか?

まず担当コーディネータからアドバイスを受けたのが、営業ツール制作における訴求表現です。 これまでの訴求方法といえば専門的な情報やデータがほとんどで、一般の方にとってみれば非常に固い印象になっていました。当社の事業は完全なるBtoBですし、営業では技術者に対し化学的な特性を訴求していく側面が強かったためです。 しかし、新規事業となる「パッケージフレッシュ」では、従来のターゲット層だけでなく、病院や学校、高齢者施設、スポーツ施設、商業施設など、より広い範囲に裾野を広げていくことが必要です。

そのためには、今までのような専門的な技術資料ではなく、まず幅広い対象に興味を持っていただけるよう親しみやすく分かりやすい訴求表現が必要というアドバイスをいただきました。 そこで、紹介いただいた制作会社のデザイナーさんとイラストを使った楽しいカタログを作成して、展示会などに設置したところ、たくさんの方が手に取ってくださいましたね。

旧カタログ
旧カタログ

新カタログ
新カタログ


そして、もうひとつのアドバイスが、より信頼性の高いエビデンスを作成すること。 当社の商品は化学薬剤ですので、最終的にはやはり科学的データや根拠に基づく説明が求められます。 従来は社内で行っていた試験を第三者機関であるNPO法人に協力を仰ぎ、スポーツ施設や高齢者施設などで実行中です。データに客観性を持たせることで、より高い信頼性と説得力が生まれると思います。秋頃には正式な数値を取得できる予定ですので、完成次第、一気に営業活動を広げていくつもりです。

大竹様

プロジェクト認定を受けて本当に良かったと思われるのはどんな点ですか?

何と言っても、プロジェクトを着実に推進していくパワーをもらえたことですね。 我々のような中小企業の組織では、管理者も第一線で活躍するプレイングマネージャーですし現場担当である私自身も既存業務と兼務しながらの作業になります。多忙な時期にはついつい目の前の業務に追われ、新規のプロジェクト進行が疎かになりがちです。また、社内の人間だけではどうしても視野が狭くなり、気づけない課題があったり、気づいたとしても解決策が見いだせないことも少なくありません。

そうした状況の中、第三者の立場でより広い視野から物事を見てくれるコーディネータの意見やアドバイスは非常に参考になりますし、きちんと進捗状況を図りながら行動を促してくれるのでとても心強かったです。コーディネータの存在がなければ、ここまで来るのに3年は掛かったかも……と思うぐらい(笑)。

さらに、今回のプロジェクト認定を受けて組織的に変わったこともありました。これまで個別でバラバラだった各拠点の動きが、リンクされ有機的に連携できるようになりました。プロジェクトを推進していくためのPDCAを社内全体にフィードバックしていくことで、組織全体の活性化にもつながっているような気がしますね。

今後の展開として、御社としてはどのような事業の可能性をお考えでしょうか?

まずは商品名にある通りパッケージエアコンの分野でしっかりと事業基盤を確立し、そこからいろんな可能性を模索していきたいですね。

次に空調機器のメンテナンスや清掃サービスを取り扱う企業とのコラボレーションや、極めて高い衛生面と安全性が求められる生産環境からの問い合わせなど、すでにさまざまな方面から反響をいただいており、事業の可能性が大きく広がっているところです。このような顧客の需要にマッチした新たな商品開発を行い、「パッケージフレッシュ」シリーズとしてラインナップを拡充していきたいと考えております。

現時点では除菌対象はエアコンですが、人々の健康や安全性を追求していくなら機器だけでなく壁や床、空間全体におよびます。 また、皆さんご存じの通り日本の気候は近年大きく変化しており、従来は生息できなかった菌やカビが増殖することで人体へのリスクも高まっています。 それらを背景に除菌に対する社会的ニーズは大きく、事業としてのポテンシャルも、今後ますます拡大していくでしょう。将来的にどんなマーケットが広がっていくのか、当社としても楽しみなところです。

大竹様

最後に、新規事業開拓に意欲を燃やす若き起業家や組織人に向け、プロジェクト認定企業の一員としてメッセージをお願いします。

新しいことへのチャレンジは、決して容易なことではありません。個人で会社を立ち上げる方はもちろん、企業組織のなかでプロジェクトを作りまとめ上げていく作業は本当に大変で、膨大な準備や手間暇を考えるだけでつい尻込みしてしまうのも理解できます。 だからこそ、力強いサポートが受けられる大阪トップランナー育成事業への応募に、大きな意味があると私は思っています。

認定を受けるとなると、物理的、心理的なハードルを感じるかも知れませんが、まずは勇気を出して一歩を踏み出して欲しいですね。そのための準備が現状を切り拓くきっかけとなり、物事を大きく動かしていく原動力になってくれるからです。

立ち止まっている間に時は1年2年と平気で経過していき、気づいた時にはビジネスチャンスを逃してしまっていた、という話はよくあること。 大変だけれども、やらないデメリットよりもチャレンジして享受できるメリットのほうが遙かに大きいはずです。ぜひ、最初の一歩を踏み出し、未来へと前進してください!

企業DATA

三菱ガス化学が開発したユニークな水処理剤の他、新たな薬剤開発によって問題を解決する水処理システムとトータルケアを提供

ダイヤアクアソリューションズ株式会社
研究技術センター主任 大竹 弘明