ヘルスケアビジネスで成功するマーケティング|新ビジネスの種

2016年12月21日

第8回 ヘルスケアビジネスの3つのCOMMUNICATION

情報発信の「三種の神器」とは?

まず、ホームページをつくらなきゃ! そして、チラシをつくらなきゃ! それから、広告出さなくちゃ!って思っているあなたへ。 で、何をしますか。きっと、ホームページは制作会社へ、チラシはイラストレーターを使いこなせる知り合いに、広告はコミュニティ誌のスペースを買って、という行動を取っているに違いありません。でもこれは、3つのTo-Do Listをやりこなすだけ、やった気になるだけのもの。

そもそもヘルスケアビジネスには、どんな情報発信が求められるのかを考えなくてはいけません。ヘルスケアの商材(商品、サービス、施設など)の価値を伝えるために必要なのは、次の3つのアプローチです。

  • 「エビデンス」をつくる、そしてそのエビデンスを積み重ねるための学術情報
  • 「話題」をつくる、そしてその話題を積み重ねるための戦略PR
  • 「メッセージ」をつくる、そしてそのメッセージを積み重ねるための広告プロモーション

この全体設計図のどこにホームページ作成があって、どこにチラシ配付があって、どこに広告出稿があるかを見てみましょう。これらの行動は、決して「三種の神器」になっていないことに気づくことでしょう。

“トリプル・メディア”という考え方

「三種の神器」を正しく理解するには、“トリプル・メディア”を理解するとよいでしょう。 つい最近まで、メディアといえば「マスメディア」を指し、新聞・雑誌、テレビ・ラジオという時代がありました。これらの広告スペースをマスメディアから引き受け、マスメディアに代わって企業に売る広告代理業が、長いこと幅を利かせる時代でした。しかし残念ながら、これらマスメディアの情報発信の価値は下降し続け、いまや下げ止まりまで達した感じです。

一方、それらに代わって台頭した「デジタルメディア」では、何の精査も検閲も校閲もないままに情報が自由に発信され続ける事態を招き、つい最近、医療情報を扱っていたデジタルコミュニケーション企業のトップが頭を下げるような事件がありました。検閲の代わりに、そこにあったのは、著作権侵害を回避するための原稿作成時のガイドラインでした。 さて、ヘルスケアの情報発信にあたり、いま私たちに求められるものは何でしょう。

  1. 1) 「オウンド・メディア/Owned Media」(自ら所有し、評価等を担保するメディア)を用いて、学術情報(商材の有効性・安全性・簡便性・経済性に係るエビデンス)を発信する。
  2. 2) 「アーンド・メディア/Earned Media」(第三者が取り上げ、評判等を獲得するメディア)を用いて、PR素材(商材の共感性・安心感・事前期待値・事後満足度につながる話題)を発信する。
  3. 3) 「ペイド・メディア/Paid Media」(消費者に働きかけるために、広告枠の費用を負担するメディア)を用いて、プロモーション素材(意思決定・消費行動を支援するメッセージ)を発信する。

といった“トリプル・メディア”をもって「三種の神器」として機能させていくことが求められます。大切なのは、そのバランスを保つことです。大きな企業は、学術部が学術情報を、広報部がPR素材を、宣伝部がプロモーション素材を担当し、その役割を分担し、責任を徹底しています。小さい企業であるなら、これらのバランスを保つ役割責任をもつコミュニケーション担当者を置くとよいでしょう。

執筆者:西根英一(株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ 代表取締役社長、マッキャン・ワールドグループ 顧問、事業構想大学院大学事業構想研究所 客員教授)
編集人・編集責任者:武坂

西根英一氏

<プロフィール>
マーケティングデザイン開発とコミュニケーションデザイン設計の専門家。商品開発、サービス創造をはじめ、市場戦略、販路開拓、顧客獲得のための“精緻な設計図”を描き、広告プロモーション、戦略PRを最適化する。近著に、『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』(宣伝会議)。 大塚グループ、電通グループを経て、マッキャン・ワールドグループ。大手企業、全国の中小企業のヘルスケアビジネスをマーケティング戦略面からコンサルテーション、地方自治体の地域ヘルスプロモーションを支援する。各種研究機関の役員、委員も務める。大学教員(専門:ヘルスケアマーケティング、若者マーケット)。講演登壇、番組出演、教育研修の機会多数。