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2012年12月18日

デジタルシニア急増中
~70代のネット利用は7年間で3.5倍、人気は地図情報検索~

IT利用はシニア世代でも急激に進んでいる。シニアの利用者はこの10年間で10倍以上に増加したという調査結果もあるほどだ。しかも、ホームページの閲覧といった初歩的な使い方だけでなく、ショッピングやチケット予約などサイトへの入力を伴う使い方までする人も多い。

今後は趣味だけでなく、健康や介護、コミュニケーションなど生活全般まで大きな影響が予想されるITであるが、性・年代・地域によっても利用状況の差異が大きく、格差の解消が今後の課題となっている。

今月は、シニア世代のIT利用について紹介する。

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1.60代前半の7割以上、70代の4割以上がネット利用者

2011年末時点の6歳以上の推計人口におけるインターネット利用者推計(1年間にインターネットを利用したことがある人)は、前年に比べ148万人増加の9,610万人となっている。普及率の伸びは昨今鈍化しているものの、2000年に比べると2倍以上にあたる約8割(79.1%)となっている。

図表1 インターネット利用者数及び人口普及率の推移

インターネット利用者数及び人口普及率の推移

出所)総務省「平成23年通信利用動向調査の結果(概要)」

注)[1]調査対象年齢は6歳以上。

[2]インターネット利用者数(推計)は、6歳以上で、調査対象年の1年間に、インターネットを利用したことがある者を対象として行った本調査の結果からの推計値。インターネット接続機器については、パソコン、携帯電話・PHS、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機等あらゆるものを含み(当該機器を所有しているか否かは問わない。)、利用目的等についても、個人的な利用、仕事上の利用、学校での利用等あらゆるものを含む。

[3]インターネット利用者数は、6 歳以上の推計人口(国勢調査結果及び生命表等を用いて推計)に本調査で得られた6 歳以上のインターネット利用率を乗じて算出。

[4]無回答については除いて算出。

年代別に見ると、2011年の50歳以上の利用率は、50歳未満の利用率(9割)よりは低いものの、60代前半で7割以上(73.9%)、60代後半でも6割以上(60.9%)、70代でも4割以上(42.6%)が利用している。

また、全体に比べて、50歳以上の利用率の上昇幅が大きく、特に60代後半や70代では、2003年から2011年の7年間で約3倍、3.5倍となっている。60代、50代は2008年以降で利用率の伸びが顕著である。

図表2 年齢階級別(50歳以上)インターネット利用率の推移(個人)

年齢階級別(50歳以上)インターネット利用率の推移(個人)

出所)総務省「通信利用動向調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

都市規模別にインターネット利用率を見ると、「特別区・政令指定都市・県庁所在地」では、全体平均を5ポイント上回る84.2%であるのに対し、その他の市は77.4%、町・村は73.3%と低くなっている。ただし、60~70代のシニア層では大都市におけるネット利用が突出しているという調査結果もあることから、都市規模による格差が大きいことに注意する必要がある。

図表5 都市規模別インターネット利用率(個人)

都市規模別インターネット利用率(個人)

出所)総務省「平成23年通信利用動向調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

2.シニアのネット利用は「携帯派」が優勢

家庭内でのインターネット利用頻度をみると、毎日利用するのは20代の70.9%がピークであり、それ以上の年代では加齢に伴って低下する。それでも、60~70代の4割程度の人は「毎日少なくとも1回」、「週に少なくとも1回」をあわせると6~7割の人が利用しており、ネットはシニアにも身近なものとなっている。

図表4 家庭内からのインターネットの利用頻度(対象:家庭内からのインターネット利用者)

家庭内からのインターネットの利用頻度(対象:家庭内からのインターネット利用者)

出所)総務省「平成23年通信利用動向調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

60歳以上のインターネット利用端末機器の種類は、「自宅のパソコン」(31.1%)より「携帯電話」(33.2%)の方がやや多くなっている。携帯電話各社がシニア向けに画面が見やすく操作が簡単な端末を投入しり、直感的な操作ができるとシニアに好評なスマートフォンが普及してきたこと等によって、シニアのインターネット利用が急増していることがうかがえる。

図表3 主要端末別世代別インターネット利用率(個人)

主要端末別世代別インターネット利用率(個人)

出所)総務省「平成23年通信利用動向調査の結果(概要)」

3.シニアに多い「地図情報提供サービス」

シニアの家庭におけるネットの利用目的を見ると、全体と同様に、電子メール、ホームページやブログの閲覧が多いが、地図情報提供サービスの利用が全体に比べて多くなっている。旅行好きのシニアのライフスタイルを反映していると考えられる。

逆に、ソーシャルメディアやオンラインゲーム等の利用は全体より低くなっている。

図表5 家庭でのインターネット利用目的(年齢別)

家庭でのインターネット利用目的(年齢別)

出所)総務省「平成23年通信利用動向調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

まとめ

  • 今回は利用している人に焦点をあてて、シニア層のネット利用について見たが、現在、利用していない人も全く無関心というわけではない。ネット経由のみの応募やネットで低価格で商品を購入する機会が無いといった不満や、もしネットが使えれば、旅行の手配をしたり、昔のテレビ等の番組を視聴したいといった要望もある。
  • 現在、インターネットを使っていない人は、これまでに利用のきっかけや強い動機(特定のコンテンツ等)がなかったり、ITへの抵抗感(面倒臭さ)やリテラシーの低さ等があるのだろう。早くからインターネットに親しんだ世代とは異なり、手厚いサポ-トが必要となる。ソフト、ハードの使いやすさだけでなく、交流を支援するコンテンツを増やしたり、ネット利用の楽しさを伝えていくような機会を増やすことも必要となってくる。また、シニアのニーズを読み違えないことも重要だ。
  • 例えば、数年前から、団塊世代の退職後を見込んで、数々のシニアまたはセカンドライフサイトが次々と登場したが、旅行から高級品などコンテンツの充実ぶりにもかかわらず閉鎖しているものも多い。かえって、地域密着で交流や出会いを支援したりするものが受けている。健康管理は必須とばかりにPHR(personal health record)的な機能をつけたり、高尚な内容など“真面目すぎる”ものより、肩の力を抜いてリラックスしながら楽しめるもの、ということかもしれない。
  • 一方、今後はITリテラシーの高いシニアが増えていく。リアルタイムでのコミュニケーションや動画コンテンツ等にも抵抗無く利用されるようになってくると、健康面でのモニタリングやちょっとした栄養・運動等の指導なども一層広がっていくことが考えられ、健康・介護等のビジネスモデルは抜本的な変化が求められる。

編集人:井村 編集責任者:瀬川
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社