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2013年11月19日

成長が期待される「シニア向け、生活を豊かに便利にするグッズ」
~シニアの機器操作はTVが限界?!~

高齢者向けの道具というと、福祉用具・介護機器等がまっさきに頭に浮かぶが、日常生活でのちょっとした不便を解消する便利グッズ等の商品も高齢者にとってはQOL(生活の質)を上げる重要なツールである。一方で、高齢者が使いやすいというと、ユニバーサルデザインの概念と重複する部分もあるが、ここでは、よりシニアに特化したものをさしている。

パソコン、携帯電話、DVDプレイヤー、シニアが「使いたいのに使いにくい!」と感じる機器は多い。しかし、その分、潜在需要がまだまだ眠っているともいえる。

国内でもそのような発想のもと、様々な商品が開発されているが、種類の多さやデザインの豊富さでは海外がまだ参考となる部分がある。今月はそれらを整理してシニア向けツールの機能を検討する。
*本レポートでは60代、70代をシニアと位置づけている。

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1.シニア特化機器・器具とは?

ここでいうシニア特化機器・器具とは、高齢者向けに使いやすく、かつ、ニーズや嗜好に合わせて工夫された商品のことをさす。シニアに機能を特化し、マーケティングも合わせて考えられたという点では、誰もがバリアフリーに利用できる「ユニバーサルデザイン(UD、共用品)」※とは異なる。シニア特化機器・器具は、いうなれば、「シニアも使える」ではなく、「シニアが使いやすい(若年層のニーズとは異なるかもしれない)」プロダクトである。

  • ※ユニバーサルデザイン
    性・年代・文化・言語・障がい・能力の差異によらずに利用することができるように作られた施設・製品・情報・環境の設計・デザイン。バリアフリー(障がいの克服)よりも、さらに広範かつポジティブな概念ともいえる。

ユニバーサルデザインの成功例としては、液晶ビューカム(シャープ)やウォシュレット(TOTO)といった代表例がある。当初は障がい者のリハビリ用に開発されていたジョーバ(Panasonic)も、広義ではユニバーサルデザインに該当するかもしれない。心身のハンディがある人向けに開発した技術を汎用品にも適用したところ、ニーズが合致して、ヒットにつながったというものである。

一方、シニア特化機器・器具のヒット商品には、かつてのツーカーS(京セラ)等が挙げられ、最近では、あんしんファミリーケータイ 204HW(ファーウェイ)等がシニア向け路線を打ち出している。明らかにターゲットはシニアであり、見やすい、分かりやすいからと若年層が購入することは少ないだろう。

2.シニアにウケる機器・器具の機能~できる限り視認性よくシンプル化、使いたい機能が表面にあってすぐ使える~

シニア特化機器・器具の特徴、どのような機能をもってシニア向けたらしめているのかというと、重要なのは、いろいろ考えなくても“すぐ使える”ように、ニーズをふまえた機能が単純化され、表面に使いたい機能が並んでいることである。

現代のシニア世代は若い頃からデジタル機器の様な階層構造のある機器に慣れ親しんでいるわけでもなく、また、加齢に伴って一時記憶が低下する結果、結果にたどり着くまでに複数回の操作が必要で、直前の動作の記憶を保持しておく必要のある階層構造の操作は難しい(間違っても戻り難い)という見解がある。そうなると、シニアが直感的に使えるのは、機能が単層構造となっているTV等の家電どまりであり、階層構造が操作の前提となっている、パソコンはもちろん、DVDプレーヤー、携帯電話、コピー機、最近では様々な設定ができる洗濯機等に関しても難しいと感じる可能性が高いということになる

海外では、携帯電話だけでなく、TVやDVDのリモコン等でもシニアに使いやすいものが出ている(例:FjärrkontrollenDoro HandleEasy 321rcGOCLEVER trådlös fjärrkontroll)。

いずれも、視認性をデザインによって追求したもので、下記のような特徴がある。

中には、多様な機種、あるいは、TV・DVDプレイヤー・CDプレイヤーにも対応できるようになっていて、個人のニーズに合わせた設定が可能なものもある。リモコンは、それらの家電の純正品ではなく、リモコン単体をシニア仕様に開発した製品である。

前述の携帯電話においても、最初からシニア向けに開発するのではなく、既製品に付属品を後から加えて使いやすくするという発想のものもある。例えば、携帯電話をケースにいれるだけで、接続でき、表面は、電話を切る、かけるといった通話機能のみに単純化されて表示されるというもの等である。

他にも、操作を単純にするために、

  • キーボードやボタンを別にとりつける
  • PCではなくTVに接続する

等によって、少ない段階で目標に達することができるようにする方法等がある。

まとめ

現段階では、シニアは複雑な機能を追求して自分仕様に微調整をしながら楽しむといった使い方をすることは少なく、最低限の機能しか使用しないことが多い。しかし、便利な製品を使って生活を楽しみたいという欲求は高く、このような発想を取り入れた商品へのニーズは高い。機器類に関しては、シニアの使い方を考えた上で、どこまでが求められる機能か見極めることが、シニア向け商品のヒットの条件である。

再度整理すると、シニアに好まれる入力機器のあり方には、下記のようなものがある。

  • 自社製品のインターフェイス(リモコン等)を限りなくシンプル化する
  • 汎用的に多機種で利用できるような入力機器(リモコン等)を加える
  • 既存製品でシニアが扱えるもの(TV等)に接続するような設計にしておく/等

シニアといっても70代と60代ではデジタル機器のリテラシーは格段に異なる。将来的には機器の扱いに慣れたシニアが大半となると考えられる。しかし、シニアの見え難さや認知のし難さ、記銘力といった問題は残り、また一方で、さらに技術革新が進むことから、常に、「最新機器」対「興味ない・取り残されたシニア」という構図も大なり小なり存在し続けると考えられる。

再び現在について振り返ると、上記で挙げた、パソコン、DVDプレイヤー、携帯電話、コピー機、洗濯機等についても、今回の様な観点を取り入れれば、巨大なシニアマーケットの潜在需要をまだまだ掘り起こしていける可能性は高い。

編集人:井村 編集責任者:前場
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社