プロジェクトサポート(ハンズオン支援)

ハンズオン支援事例

株式会社シーアイ・パートナーズ2017年認定
経営も、経理も、採用も、すべてを兼務するという、創業時ならではの苦難を軽減して体質改善するため、コーディネータのアドバイスで経営に集中できる環境を構築。

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障がい者の進路選択の狭さを、改善するために支援事業を決意。

(岡島)家住さんは起業前からわたしのセミナーに受講生として参加してくださっていたんですよね。

(家住)はい。じつはわたしの長女が重度の聴覚障がいで生まれてきまして。最初は施設に預けながら育てていたんですが、日本の障がい者への支援や訓練を妻といっしょに調べていると、どうも海外に比べて遅れているようだと。けれど自分の娘が将来の進路を決めるときに「障がいがあるから無理」なんていう状況にはしたくない。そこで障がい者支援の事業をはじめることは早くから決意していたんです。

(岡島)その熱意には、わたしもぜひ応援したいと感じていました。

(家住)それで、まず勤務していた百貨店を辞めて、大手外食チェーンの障がい者雇用の人事に転身。全国各地の支援学校や施設を訪問し、障がい者の採用から職場定着支援、業務の訓練等に従事してきました。しかし、ここでショックだったのは、採用した子どもたちに「将来は何になりたい?」と聞くと「ゲームクリエイター」とか飲食関係とはまったく違う職種が返ってくるんですね。それなら専門学校に通って学んだほうが良いのではないかと尋ねると「え?ぼくら専門学校にいっても良いんですか?」と言うんですよ。彼らには支援学校の高等部を卒業すると、就職するか、他の施設にいくかしか選択肢がないんです。

(岡島)それは衝撃的ですね。

(家住)ええ。そんなあほな…という気分でした。もちろん支援学校や施設のスタッフの方々が悪いわけではない。みんな良い人ばかりです。ただ、過去からの慣例として、それがあたりまえになっている。

(岡島)そのことが「イキイキと生きる進路選択を実現」という、この事業のきっかけになったわけですね。

(家住)働くにせよ、学校に通うにせよ、まず自分の意志で決定できること。すべてはそこからです。そのためには、必要となる常識やマナー、コミュニケーション力をトレーニングしなくてはなりません。たとえば障がい者の方でアナログ時計を読めない人がいたりします。その原因はさまざまですが、周囲が“障がい”という先入観で接するために、できないことを教えたりせず棚上げしてしまうんですね。だから読めないままに育ってしまう。これでは障がいに関係なく社会で上手に生活することは難しくなります。だから、わたしたちの人材育成施設「すたぁりっと」では、発達年齢にあったステージごとに社会スキルを習得してもらいます。そうすることで、障がいを持つ子どもたちと企業や教育機関をつないでいきたいんです。

家住様

優秀なスタッフの採用によって、まずは経営に専念できる時間を確保。

(岡島)創業は2015年でしたが、大阪トップランナー育成事業として認定された2017年には、もうすでに5店舗ほど施設を開設されていましたね。

(家住)事業の拡大を少し急ぎすぎたのかもしれませんね。おかげで、赤字先行になってしまい、認定時の課題はとにかく財務面での収益化ということでした。

(岡島)すでに実績があったことは、大阪トップランナー育成事業に認定される上で有利だったことは確かなのでそこは問題ないんですよ。ただ、収益性の確保はやはり最優先。そこで、まずは綿密な事業計画の策定から着手しましたね。

(家住)創業期は、営業も、経理も、採用もすべて自分が兼務していたため、やることが多すぎて正直整理がついていませんでした。

(岡島)なので、まずはきちんと目標設定をして、定期的にその達成度を確認していこうと。

(家住)事業計画表として可視化されたおかげで、課題ごとに期限や優先順位がわかりやすくなり、一気に事業がスムーズになりました。それまでとは比較にならないほど経営が改善されましたね。あとはハンズオン支援によって優秀な人材を採用できたことも大きかった。

(岡島)事業を拡張するのは良いけれど、家住さん一人ではとても処理できていない感じでしたからね。人材紹介会社を紹介させてもらいました。

(家住)そのときに採用したスタッフは、いまも事業の中心として活躍してくれています。おかげで現場から少し離れる時間も確保でき、人事制度や採用基準など、今後の柱となる社内環境を整えていく余裕が生まれました。

(岡島)採用基準に関しては、自分など口出しできないほど、しっかりしたレベルのものを作られていましたね。

(家住)最初は自分たちを過小評価していたというか、福祉専門の人材を募集すれば、自分たちよりもっと優秀な人たちが集まるだろうと思っていたんです。ところが現実はそうではなかった。これでは採用基準をしっかりしておかないと施設を運営できないという危機感があったんです。

(岡島)認定時のスタッフは30人ほどでしたが、いまは何人ですか。

(家住)社員やバイトをあわせて52名です。

(岡島)それはかなり増えましたね。

(家住)みんな頼れるスタッフばかりで、助かっています。福祉事業に携わる人というのは、みんな良い人ばかりなんですが、ビジネスというものを学んでいないんですね。どうしてもいままでと同じことをしようとする。

(岡島)はじめて事業内容を聞いたときには、家住さんの発想は斬新だなあと思いましたよ。だけど、実現させれば理想的なすばらしいビジネスになるとも思いました。

(家住)いままで障がい者の方たちの月収というのは内職作業が中心のため1.5万円程度だったんです。けれど、きちんとトレーニングを受けた人たちには立派な労働力となれるだけの能力があることは証明されています。そこで企業と契約して月給制度で働けるようにしていきました。すると月収が12万円ぐらいまで増えるんですよ。

(岡島)きちんと生活できるだけのお金を稼げる仕組みをつくりあげたわけですね。

(家住)ええ。中心となっている職場は、テナントビルやマンションの清掃です。これは社会インフラとして経済変動の影響を受けにくい業種なので収入が安定します。さらに人手が大きく不足している分野ですから、社会課題の解決にもつながりますし。

(岡島)ビジネススキームとして完成していますよね。

岡島様 家住様

地道な経営体質の改善によって、経営環境が激変しても売上は右肩上がりに。

(家住)課題であった収益性に関しては、地道に経営体質を改善していくしかなかったんですが、衝撃だったのはやはり法改正ですね。

(岡島)障がい者支援への国からの報酬が10%カットされたんですよね。

(家住)企業にとっては利益が10%ばっさりとなくなるわけですからね。頭を抱えました。そこで岡島さんからのアドバイスもあって、赤字店舗の閉鎖や賃借物件の稼働率向上などを進めていったんです。

(岡島)わたしが想定していた以上に、大胆にコストカットをしていきましたよね。

(家住)すると驚くことに、法改正後の方が売上は右肩上がりに伸びていったんです。報酬が10%カットされたにもかかわらず収益性が高まった。理論的に体質改善をおこなうことの効果を実感できました。なんというか“経営”というものが本格的に動きはじめた気がしましたね。

(岡島)もちろんコストカットだけでなく、プレスリリースなど認知度アップのために展開したさまざまな施策が着実に効果をあげてきたおかげでしょう。産創館が主催するビジネスプランコンテストなどにも積極的に参加してもらいましたね。そこで獲得した成長支援金のおかげでHPの改修もできましたし。

(家住)ほんとうに、ここまで手厚くサポートしてもらえるとは思ってもいませんでした。資金調達のためにエクイティファイナンスを利用したときには証文作成のための弁護士まで紹介してもらって。

(岡島)それがコーディネータの役割ですからね。自分が直接手伝うのではなく、あらゆる分野から専門家をマッチングしていく立場なので。しかも、大阪トップランナー育成事業には10人ほどのコーディネータが居て、それぞれが担当しているプロジェクトの課題を月一回の会議で共有していくシステムがあります。わたしが不得意な分野でも、それが得意なコーディネータの知識や人脈を引っ張ってこれる。いわば10人体制のチームで一丸となって支援しているようなものです。

(家住)事業を立ち上げたばかりのベンチャーにとって、コーディネータというのはほんとうに頼れるメンターでした。

(岡島)わたし自身、なんとか応援したいという気持ちもありましたしね。

(家住)そういえば起業前に話をしたときも「まず応援してもらえる味方を探しなさい」と言われましたよね。

(岡島)それは大事なことなんです。手元資本が潤沢だと問題ありませんが、そうでないなら最初にどれだけ出資してくれる人がいるかも成功の決め手になります。出資者の数や金額で金融機関の融資審査や上限額も変化しますしね。創業する人には、いま勤めている会社を上手に辞めるようにとアドバイスしています。

(家住)わたしが起業したときも、最初の顧客は、なんとそれまで勤めていた会社でした。これにはほんとうに助かりましたね。ハンズオン支援の期間は終了しましたが、これからも個人的におつきあいよろしくお願いします。

(岡島)社会的にも意義のある事業ですし、サポートできるのは光栄なことなので、こちらこそよろしくお願いします。

企業DATA

認定プロジェクト名:
障がい児の未来に明るい笑顔を!イキイキと生きる進路選択を実現

認定プロジェクト詳細はこちら

株式会社シーアイ・パートナーズ 代表取締役/家住 教志氏

2017年度 認定プロジェクト実施企業
株式会社シーアイ・パートナーズ
代表取締役 家住 教志氏

重度の聴覚障がいで生まれた長女が将来進路を決めるとき、障がいを理由にあきらめるような社会であってほしくないと障がい者支援の活動を決意。百貨店での勤務を辞めて、まずは大手外食チェーンの障がい者人事に転職。そこで出会った障がい者訓練の専門家と株式会社シーアイ・パートナーズを創業。現在は補助金の枠を超えた私費での訓練を想定し、より高度で専門的なサービスの展開にも挑戦中。

大阪トップランナー育成事業 コーディネータ/中小企業診断士 岡島 卓也氏

大阪トップランナー育成事業 コーディネータ
中小企業診断士 岡島 卓也氏

大阪府出身。中小企業診断士。家業の酒屋経営に従事した後、コンビニの運営指導やIT系コンサルティング会社の勤務を経て現職に至る。創業全般の支援や新規事業の立ち上げ、経営戦略・事業計画書の作成、資金繰り及び資金調達などを重点的に担当する。各種のセミナー講師として登壇するなどコンサルタントとして多彩に活躍。

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