プロジェクトサポート(ハンズオン支援)

ハンズオン支援事例

株式会社 笑美面2015年認定
中立・公平な施設マッチングで高齢化社会と真正面から取り組む。

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すでに大きな社会問題となっている日本の高齢化率。詳細な介護施設データをもとにしたマッチングサービスで高齢者一人ひとりに理想的な終の棲家を紹介する。そんな認定プロジェクトが「介護」に新たな可能性をもたらす。

女性

介護の現場を経験して感じた社会に胸を張れるやりがい

(榎並)笑美面を立ち上げたきっかけは、家業の不動産デベロップメントに携わっていた時、老人ホーム運営に進出しようとしたことでした。介護サービスについて1年ほど勉強してヘルパー2級の資格を取得し、1か月の実習に参加しました。しかし現場実習に出ると3日ぐらいで違う感覚を持ちました。介護業界の事を全然知らない自分が、今行う事業ではないと感じたのです。もともと不動産事業に関連する「住」の延長で考えていたのですが、介護施設というのは「衣食住」どころか「衣医食職住」です。よほどの知識や人脈がないと失敗するだろうと。けれど実習を通じて介護事業そのものにはすごく“やりがい”を感じ、胸を張れる仕事として一生携わっていこうと決意していました。そこで介護施設のマッチングサービスを開始したのです。

(中川)笑美面のこのサービスについては以前から知っていて、社会的にすごく意義のある事業だなと注目していました。2015年にトップランナー認定を受けてコーディネータを担当することになりましたが、最初に驚かされたのは提携している介護施設に関しての情報量。およそ100項目にわたる細かな情報を管理し、それをもとにきめ細かなマッチングをしていたことです。

(榎並)データの項目はすでに130まで増えていますね。すべてスタッフが実際に訪問取材したもので内容はデータベース化されています。そこには立地や費用ばかりでなく、将棋など趣味のサークルはあるか、どんな病気の方が多いか、名物スタッフはいるかまでヒアリングして共有されています。その上でお客様からフェイストゥーフェイスでニーズをお聞きし、ベストな施設を紹介しています。

榎並様 中川様

認知度アップや人材獲得など、目的に適した施策を展開。

(中川)コーディネータとしての第一歩は、この素晴らしいサービスを広く知ってもらうこと、笑美面の認知度をアップすることでした。最初に手がけたのは、一般向け展示会への出展だったでしょうか。

(榎並)一般向け展示会への出展はとくに有効でしたね。認知度向上とともに新規顧客をかなり獲得できました。スタートアップ段階の企業としては、費用の一部を補助してもらえたこともすごく大きかったです。

(中川)あとは施設やケアマネージャー向けの営業ツール、人材募集パンフレットなどターゲットを明確にしてさまざまな支援プランを提案し、実施していきました。

(榎並)採用には力を入れていましたね。介護事業を勉強して気づいたのは、賃貸であれ購入であれ不動産ならプロがいるのに、施設紹介にはプロがいないことです。専門外であるケアマネージャーやソーシャルワーカーが補助している程度。そこで、我々がプロになろうと考えたわけです。もちろん経験者などはおらず、みんなで試行錯誤しながら方法論を見つけていきました。認定当時は10人規模だったスタッフが現在では60人まで増え、全国一と自信が持てるほどプロフェッショナルな集団に育ちました。

(中川)なにしろ採用では社長自らが一人ひとり、2時間ぐらいかけて面接していましたからね。介護事業にかける熱い思いが伝わったのだと思います。

(榎並)もともと介護事業にやりがいを感じて始めたビジネスですからね。うちでは入居契約のことを「スマイル」と呼んでいるのですが、営業スタッフの成績は手数料売上ではなく、このスマイル数だけで評価しています。お客様に笑顔、満足をどれだけ提供できたか。それだけが基準です。極端な話、紹介手数料の発生しない施設にお客様を紹介するゼロ円スマイルでも良いんです。

榎並様 中川様

提携施設数の増加と東京進出で事業が大きく成長軌道へ。

(中川)そういう本気の企業姿勢もあって、支援期間中にもどんどん成長していることが実感できました。

(榎並)関西での提携施設が全体の50%を超えたあたりから加速度的に事業が成長しました。提携していない施設のほうがマイノリティになると、逆に施設側から提携を申し入れてくるようになってきたんです。あとは東京への進出がひとつのブレイクスルーになりました。

(中川)東京進出にあたっては、このトップランナー育成事業のようなものが東京にもないかと相談されましたね。

(榎並)なにしろトップランナー認定の効果が大きかったものですから。介護事業というのは社会的なサービスなので、自治体の認定マークが名刺に入っているだけで相手の印象が大きく変化します。業界内での知名度も低いわけですから、トップランナー認定を受けているということで施設からの信頼度が上がりました。

(中川)ただ残念なことに東京では類似の仕組みを見つけることができませんでした。やはり大阪市のトップランナー育成事業が特殊で、他の自治体では「特定企業に支援はできない」というのが基本姿勢でした。

(榎並)それでも東京進出を無事に実現でき、いまは神奈川、福岡にも拠点を展開しています。トップランナー認定時には130ほどだった提携施設数が7300にまで拡大しました。ただし、まだまだ成長したとか成功したという実感はないんです。高齢化社会の日本においては、もっともっと介護事業を発展させなければいけないという使命感もありますから。

榎並様 中川様

同じ課題を抱える国々への輸出産業として介護を育成。

(中川)介護事業の発展のためにも、施設に対するアドバイスやコンサルティングをしていきたいと語っておられましたね。

(榎並)マッチングによる送客を担保にしたポジショニング戦略で、顧客視点でのニーズを伝え、介護施設のクオリティを高めていきたいんです。そうして、ゆくゆくはAI、ロボット、センサーなどを導入して介護施設の先進化に寄与したい。介護施設というのは分散した小規模事業者ですから、そうしたテクノロジーの導入が遅れている。だから笑美面がメーカーと現場をつなぐハブになりたい。介護施設が先進化すれば、介護は輸出産業になります。いまや世界中で多くの国が高齢化に直面していますし、とくに顕著な中国などは巨大な市場が見込めます。こうした構想もあって2018年には大手生命保険会社2社と資本提携を結びました。すでにハンズオン支援期間は終了していましたが、中川さんにも相談しましたね。

(中川)もともと、私はロボットやIoTが専門分野でしたので。業界の状況や技術の動向についてアドバイスさせていただきました。

(榎並)おかげで、このアイデアの課題や修正点にも気づくことができました。トップランナー育成事業の運営には、介護や医療の関連だけでなく、さまざまな分野の専門家が参加しています。こうした人たちと人脈をつなげていけることも大きな魅力だと思います。

ハンズオン支援の実例

<課題点>

Issue.1
新たなサービスであるため、一般からの認知が不足。

Issue.2
提携施設を拡大するため、業界内での笑美面の知名度アップ。

Issue.3
プロフェッショナルな相談員となれる熱意を持った人材の確保。

<ハンズオン支援の内容>

  • 展示会への出展・出展費用一部負担
  • 新聞折り込みチラシの活用
  • ケアマネージャー・ソーシャルワーカーへの紹介ツール
  • 人材確保のためのリクルーティングツール
  • 介護施設向けの会社案内

<結 果>

展示会出展による新規顧客の獲得、各種ツールの整備により、着実な人材確保が可能となった。これらにより関西の提携施設が全体の50%を超えた。さらに東京進出を実現し、事業の成長スピードが加速。大手保険会社、投資会社より資金調達にも成功した。(現在では神奈川、福岡にも拠点を展開)

企業の声

“多忙なスケジュールにまで配慮してくれる、本当にきめ細かなサポートでした。”

2015年度 認定プロジェクト実施企業 株式会社 笑美面 代表取締役 榎並 将志

2015年度 認定プロジェクト実施企業
株式会社 笑美面
代表取締役 榎並 将志

1984年生まれ。24歳の時に父親の体調不良などで南栄商事株式会社を実質的に継ぎ、不動産、税務、投資、法務、経営について猛勉強。新規賃貸物件の開発、賃貸仲介店舗の開設、新規管理物件の取得、新規事業への進出などに取り組む。2010年頃から老人ホーム開発事業のため現場実習や介護資格取得を行うが「介護のことを知らずに不動産業が開発すべきではない」との結論に至る。同時に介護事業の素晴らしさに触れ、介護関連の事業に生涯携わることを決意し株式会社笑美面を起業。

担当コーディネータ 公益財団法人大阪産業局 プロジェクトアドバイザー 中川 賀史

担当コーディネータ
公益財団法人大阪産業局
プロジェクトアドバイザー 中川 賀史

1962年生まれ。1986年に大学卒業後は旅行会社や広告・イベント会社などで勤務。2006年に国際的な産・学・官の連携のもとに情報通信関連分野における先駆的・独創的研究を推進する株式会社国際電気通信基礎技術研究所へ入社し、公益財団法人大阪市都市型産業振興センター(現、公益財団法人大阪産業局)に出向する。大阪の中小企業等の経営力強化や創業支援等の事業に携わるかたわら、奈良先端科学技術大学院大学や近畿大学通信教育部で非常勤講師も務める。

企業DATA

認定プロジェクト名:
老人ホーム探しをするなら笑美面

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