- 株式会社Mountain Gorilla2018年認定
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イニシャルコストなしの月額制で手軽にIT/IoT化をスタート。
そんな時代のニーズにマッチした独自の情報システムを売るため、
新規顧客開拓のためにコーディネータが提案した方法とは。
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非効率なテレアポぐらいしか、販売方法を思いつかなかった創業期。
(井口)わたしたちMountain Gorillaは2014年に創業した会社で、当初はIT系システムの受注開発をおこなっていました。受注先に社員を派遣して常駐する形で開発していたのですが、2017年ぐらいから独自開発の自社サービスにシフトする形になってきました。
(岡島)2018年に大阪トップランナー育成事業として認定されたのは、その独自サービスである「Pro-Manager」でしたね。
(井口)そうです。現在は「カカナイ」というサービスになっていますが、製造現場のデータ管理を電子化、自動化するという内容は変わっていません。
(岡島)名称だけを変えたのですね。
(井口)ええ。創業時から、ものづくりの現場をITで支援したいという想いがあり、それを実現するためのツールというかシステムです。時間あたりの製造数や、不良品発生数とかを、いままでは作業日報や検査表として手作業で記録していたのですが、これを手軽に電子化することから始めてもらおうと。
(岡島)最初は「スモールスタート」と呼んでいましたね。
(井口)そうしてIT化による効率アップを実感してもらえば、ゆくゆくは現場にある計測器やセンサーなどの機器と連動してデータ収集の自動化などもおこなっていける。リアルタイムなデータをクラウドに保存していければ、製造工程の効率化や不良品率軽減の対策などもおこなえるようになり、業界標準データにすることで会社間や業界間の比較も簡単にできるようになります。
(岡島)当時は、IoTという言葉がちょうど一般化しはじめた頃でしたね。
(井口)けれど、まだまだIoTというもののメリットが、製造現場では実感されていなかったというか「導入してほんとうに効果があるのか?」と懐疑的なところが多かった。そうしたところに、月額2万円だけのサブスクリプションで、とにかく1年間試してみませんかと。導入システムはオーダーメイドですけどイニシャルコストも必要ないので、1年経って効果がなさそうなら解約してもらっても結構ですよと販売しはじめたわけです。
(岡島)たしか認定時の契約社数はまだ20社程度でしたね。
(井口)そうです。なので、最初の課題はとにかく新規顧客を獲得するにはどうすれば良いかということでした。自分も含めてほとんどがエンジニアばかりの会社で、売るための方法なんかまったく知らない。当時は、テレアポだけでセールス活動をしていました。そこに大阪トップランナー育成事業のハンズオン支援として岡島さんがコーディネータになってくれた。
(岡島)まあテレアポというのは人海戦術ですからね。個人によってトークの得手不得手もあるしけっして効率は良くない。そこで、最初に取り組んだのは販売のための仕組みづくりでした。まずはWEBを通じて問い合わせが来るような流れをつくろうと。
(井口)それまではWEBからの問い合わせなんかほとんどなかったんですけどね。
(岡島)WEBマーケティングの専門家やランディングページ制作のためのデザイン会社を紹介して、準備だけで半年ぐらいかけたかな。
(井口)検索でヒット率を上げるためのSEO対策とか、導入効果をよりわかりやすくするための事例集とか、ほんとうにいろいろなアイデアをもらいました。ハンズオン支援で経費の一部を負担いただけたので費用的にもだいぶ軽減されました。
せいぜい月一だった問い合わせが、いまでは毎日のようにくるように。
(岡島)他には業界への露出を増やす方法を考えましたね。ビジコンOSAKAに出場してもらったり、MOBIOや産創館のセミナーに登壇してもらったり。BtoBビジネスですから、とにかく業界での知名度を上げてもらおうと。
(井口)プレスリリースに関しても専門家を紹介してもらい、効果的な発表の方法などを指導してもらいました。そうした取り組みのおかげで、それまでは月に1回あるかないかだった問い合わせが、いまでは1日に1回は必ずあるまでに増えました。契約社数もハンズオン支援の間に3倍に増え、いまでは5倍の累計100社を突破しています。
(岡島)認定時の目標が100社でしたから、無事に達成できたんですね。よかった。
(井口)そうした販売計画だけでなく資金計画でもすごくお世話になりました。さまざまな資金調達方法や金融機関を紹介してくれましたし。なにより助かったのは、そうした慣れない金融機関との面談時に、かならず同席してくれたんですよね。心強かったのはもちろんですが、情報共有もできていたので重要な意思決定がスムーズにできました。
(岡島)自分が紹介した金融機関ですからね。もちろん責任を持って同席しますよ。
(井口)あとは採用計画。就職合同説明会では、WEB用に作成したゴリラのビジュアルをとにかく徹底的に展開していこうと提案してくれて。ブースも、パンフレットも、会場内のサイネージも、すべてがゴリラ。そして「いまからボスゴリラー(社長)※が説明します」と。これには就職希望者もだんぜん興味をひかれたようで、予想以上に多くの説明希望者が集まりました。おかげで信頼できるゴリラー(社員)※を採用することができました。
(岡島)まあゴリラといえば霊長類最強ですからね。
(井口)われわれも、ゴリラのように最強の企業になりたい。
(岡島)そうそう。
(井口)とはいえ、コーディネータがここまでやってくれると思っていませんでした。最初に行動計画をきちんと決めて、KPIシートのようなもので目標達成度をつねに確認してくれる。そのために最低でも月に一度は来訪してくれて。その都度問題があれば解決するための情報やアイデアを出してくれたり、必要ならば専門家も紹介してくれる。自分にとっては、まさに“参謀”と呼べるような存在でした。
(岡島)とはいえ、意思決定するのはあくまで井口さんですからね。自分はあくまでも、意思決定のための判断材料を提供するだけです。
(井口)日頃のビジネスで抱いているさまざまな想いをすべて聞いてくれて、そのうえで自信を持たせてくれるようなスタイルですよね。採用計画が順調にいったおかげで、いまでは営業などをスタッフにまかせて重要な意思決定に徹することができるようになりましたけど、当時はほんとうにありがたかった。すごく理想的に二人三脚ができたサポート期間だったと思います。
さらなる成長確保のために企業ブランディングにも挑戦。
(岡島)当時から、井口さんは企業ブランディングに対する意識が高かったですよね。
(井口)IT系の企業はBtoBの関係性が基本なので、あまり関心のない企業が多いですね。けれど企業としてのブランドが尖っていけば、お客さまにも、製品にも、採用にも、すべてに効果があるような気がしているんです。
(岡島)いちどブランディングについて質問されたことがあり、そのときも専門のコンサルタントを紹介させていただきました。
(井口)ふつうIT企業だとテクノロジーのコンサルティングは依頼するけれど、ブランディングのコンサルティングなんて依頼しませんよね。
(岡島)いえいえ。それは企業が成長する上ですごく大切なことだと思ったので、すぐに手配しましたよ。
(井口)そのときに指摘されたのが、ゴリラをビジュアルとして採用したおかげで製品としてのブランディングはできているけれど会社全体としてのブランディングができていないということだったんです。「Pro-Manager」というサービス名称を「カカナイ」に改めたのも、その延長線上でのブランドづくりです。
(岡島)そうだったんですね。
(井口)あと、じつは「ゴリラービール」というのを醸造家に依頼して自分たちで製造したんですけど、これもブランディングを考えるうえでの一環でした。
(岡島)それはどういう意図ですか。
(井口)自分たちでビールをつくるとして、その前提となるMountain Gorillaの企業イメージとはどのようなものであるかをゴリラー(社員)※全体で議論したんです。自分たちの立ち位置を、もう一度確認したわけですね。おかげで「親しみやすい」「シンプル」「ポップだけど近未来的」といろいろなイメージを言語化することができました。
(岡島)社内で議論したセルフイメージを共有できたのは良いことですよね。
(井口)もちろんそれだけで終わるのではなくて、これは今後の製品開発にもつながる試みでもありました。じつはわれわれの顧客には食品メーカーも多いんです。うちのサービスで製品データを集めることはできますけど、マーケットデータを集めることはできない。けれどそれを収集できれば、たとえば20代女性の好みにあったレシピとかを提供できるわけですよね。この取り組みはすでに大学と共同研究をはじめていて、「ゴリラービール」はその土台でもあります。
(岡島)つねづね起業に必要なのは“巻きこむ力”だと思っているんです。どんな起業も、けっして一人では成功しない。技術でも、人柄でも、熱意でも、なんでも良いから人を巻きこめる力を持っていることが起業家の条件だと。井口さんは、まさにそうした力を持っている人ですね。
(井口)わたしなんかは凡人ですからね。だからこそ人とのつながりで見えてくる景色というのは絶対にあります。大阪トップランナー育成事業というのは、そうした機会に出会うための貴重な場だとあらためて感じますね。
※Mountain Gorilla社では社員を「ゴリラー」、社長を「ボスゴリラ―」と呼んでいます。