「歩きたい、動きたい」を叶えるVRリハビリを世界中の人へ届ける
VR技術を活用した次世代リハビリ機器「mediVR カグラ」で障がいを持つ人たちの「できる未来」をつくる
脳卒中や発達障がいなど、治療が難しい病気を治療
- 認定プロジェクトのきっかけについて教えてください
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原
現在、脳卒中は要介護になる原因の日本の病気のナンバーワンとなっています。国内で年間約30万人が発症し、40歳でも約40%しか社会に復帰できないというような非常に治療の難しい病気であり、100万人以上の方が悩まれています。一方で障がいに悩む子どもも多くいます。脳性麻痺や発達障がいというのは非常に治療が難しい病気で、脳性麻痺の患者さんは国内だけで4.4万人、発達障がいの子どもは全体の8.8%に及ぶという報告があります。また、従来のリハビリは「つらい」「続かない」と感じることもあり、回復のチャンスを逃してしまうこともありました。こうした状況を受けて、仮想現実技術を使い、座って手を伸ばすだけのリハビリテーションで症状の改善に寄与できるリハビリテーション用訓練装置「mediVR カグラ」を開発しました。仮想現実技術を使って動画の差分解析技術やビッグデータ解析技術、1人1人の患者さんからデータを集めモデルを最適化する技術を使い製品の開発を行いました。
全く新しい概念・アプローチで患者さんに向き合う
- 「mediVR カグラ」について詳しく教えてください
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原
脳から体に、あるいは体から脳にうまく情報が伝わらないというところを改善して、情報を整理して情報のやり取りをうまくできるようにしてあげる、ということが本質的なところです。脳卒中であれば、脳の一部が壊れてしまう病気なので、そこの迂回路を作る、というイメージです。病気というのは症例も違い、それぞれ細かく分類されますが、実は一つの文章で全てを説明することができる。それに対するアプローチであれば、どんな病気も治せるという発想自体が新しい概念であり、非常に特殊で価値があります。また、座ったまま安全に楽しく実施できることから、現在、全国の病院や介護施設、教育現場での導入が進んでいます。
- どのような特長がありますか
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原
座ったリハビリだけで歩けるようになるというのが非常に大きな特長になっており、現在既にさまざまな治療に応用されています。脳卒中や脳性麻痺、発達障がいだけではなく整形外科の病気の方や小児科の病気、脳神経外科の病気などで応用されており、大学病院施設を含む137施設に導入されています。また、医学論文が11編、日本語論文が22編発表されており、エビデンスも導入実績も圧倒的に日本で最も多いVRの医療機器となっています。
仮想現実により、座って手を伸ばすだけで症状が改善
- 治療の具体的な事例について教えてください
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原
30代の男性の方で10ヶ月前に発症した方が、「mediVR カグラ」で20分間1回だけリハビリしたところ、手の機能が大幅に改善しました。脳性麻痺で小学6年生になるまでご自身で1人で椅子に座ることもできなかったお子さんも、座ってリハビリをすることができます。33日間のリハビリを提供した結果、非常に力は弱いながらもしっかりとご自身の足で初めて歩くことができ、半年後の卒業式もしっかりとした足取りで卒業証書を受け取ることができました。また、この治療法を使うと脳の血流が増加するという結果が論文で報告されています。
- 開発、製品化までに、どのような困難がありましたか
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原
発想自体は2016年の6月には既にあり、起業して2、3ヶ月くらいでプロトタイプが完成しました。プロトタイプはすぐできたものの、見た目も重要でデザインにもこだわりましたし、UIやUXもしっかりしたものにしようと思うと製品化には時間がかかりました。また、システムである以上、不具合も多く、それを修正しながらの開発となったため、それほど単純ではなかったですね。結局、製品化に3年ほどかかり、2019年3月にようやくリリースすることができました。
家庭で当たり前にリハビリができる世界へ
- 5年以上実装されています。どのような手応えを感じていますか
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原
概念が斬新すぎて、最初の3年は「詐欺」と呼ばれるなど信じてもらえませんでした。遠回りですが、一軒一軒、病院や施設を訪ねるしかなく、丁寧に説明して、デモンストレーションで病院に機械を置いてもらい施設の人も治療できるようにして・・・というプロセスを繰り返し、ようやく信じてもらえるようになったという状況です。今は学会でも多くの方に理解していただき、ようやく一般に向けて周知を始めたところです。大阪トップランナー育成事業に応募したのも、2025年から一般への周知を始めて一気に拡大するというフェーズをお手伝いいただきたいと思ったからです。
- どのような未来をめざしますか
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原
まずは、誰もが保険医療の範囲内で治療が受けられるという状況を構築し、これまで治療を諦めていた患者さんに動ける喜びを届けたいと思っています。そして、世界に展開したい。既にテキサス大学からのインターン受け入れやジョージアでの共同研究のほか、ドバイやアメリカ、東ヨーロッパ、UAE、タイなどの大学との連携も進んでいます。最後は、必要な家庭にはこのVRが当たり前にあって、病院に行かなくても自分で治せてしまうというような未来を描いています。これは決して夢ではなく、近い将来には実現できることだと確信しています。
希望するマッチング
&パートナー例
- リハビリ施設・医療機関
- 教育機関(特別支援学校、放課後デイサービス、小中学校)
- 介護施設
- 自治体・行政(地域包括ケア、健康寿命延伸施策)