ヘルスケアビジネスで成功するマーケティング|新ビジネスの種

ライフサポート展2017

2016年8月17日

第4回 ハコ(市場)をつくるMARKET+ing

海を探しに行く

とても大切に育ててきた魚がいるとします。そろそろ海に帰してあげたい。そう思うとき、僕らは海を探しに行きます。放った瞬間、先にいた魚たちに食われてしまいそうな海には決して放したりしません。

大切に育てた魚が「商品」、放たれる海が「市場」です。しかし、ビジネスを考えると、育てた「魚」のことは気にかけても、放つ「海」を選ぶことを大して気にしていない人たちがとても多いことに気づきます。彼らはえてして、仲間が集まっている市場、本当は飽和して酸欠状態の市場で、大切な商品を売ることを決心します。

この市場を「レッドオーシャン」市場と言います。入った瞬間から殴り合い、蹴り合い、血で血を洗うような市場です。ここでまず起こるのは、「市場競争」という名のシェア争いです。既存既知が特徴のレッドオーシャン市場は、確かに“素人目”的には、出品すればそれなりに売れる市場に見えます。同じようなものが売れている市場だからです。しかしそこは、群雄割拠の戦国時代なのです。

であるなら、どんな「海」を探しに行けばいいのでしょう。

《既存既知》の市場でないとすれば、言葉遊びの延長で、《既存放置》の市場、《新規未知》の市場というものがあるはずだ!と気づくはずです。 もう少しイメージしやすいように、既存放置の市場を“手つかずの市場”、新規未知の市場を“気づかずの市場”と僕は名付けています。既存既知の市場で「市場競争」が起きるように、既存放置の市場では「市場開拓」、新規未知の市場では「市場開発」が行われます。

一般に、「レッドオーシャン」市場と対比される「ブルーオーシャン」市場は、ここでいうところの新規未知の市場のことを指します(青い海、輝く太陽、白いパラソルのリゾート地の海を連想して、ブルーオーシャンと理解すると、ちょっと誤ります)。

そうなのです。大切に育てた「魚」を海に放つとき、僕らはブルーオーシャンな「海」に放ちたいと心から願うはずなのです。敵を気にせず、自由に泳ぎ回れる海です。

空き地を探して、秘密の花園をつくる

「市場づくり」という狭義のマーケティングという言葉を日本語に訳すことは、実は意外と厄介で、上記のように、「市場競争」「市場開拓」「市場開発」という解釈があるのです。ビジネスで活用するのであれば、「今日の会議は、市場開発について議論しよう」「明日は、市場競争についてです」と使い分けると、会議の目的がはっきりします。

つまり、マーケティングをとことん突き詰めると、「空き地を探す」という行為が、最も求められる行動規範になります。そして、そのKGI(Key Goal Indicator)こそが、「(空き地に)秘密の花園をつくる」ことなのです。

空き地の探し方で、ヒントとなるアプローチをいくつか紹介しましょう。

一つ目は、「時間」の空き地を探す、です。顧客ないし自分にとっての「ONタイム」と「ONタイム」の間にある「OFFタイム」を探し当てるのです。一日24時間のうちの、一週間7日のうちの、年中行事365日のうちでポッカリと空いている時間を探して、そこに商材を置くことができないかを真剣に練ってみましょう。自家用車配車システムのUber(ウーバー)は、勤労時間と家族時間の空き地をビジネスに生かして成功している例です。ONとOFFがはっきりしている欧米のビジネス&ライフの中にあっては受け容れやすいアイデアです。

二つ目は、「空間」の空き地を探す、です。入ってますよ!という「INスペース」と「INスペース」の間にある、出かけていて不在です!の「OUTスペース」で商売できるかを考えてみましょう。はやりの「民泊」(AirBnBに代表される)は、まさしく空間の空き地を活用したブルーオーシャンビジネスの発想から生まれました。

三つめは、「課題」の空き地を探す、です。これが最もヘルスケアビジネスに応用しやすいかもしれません。顕在化している「健康課題」と「健康課題」の間にある、潜在化している「健康課題」を見つける手法です。たとえば、「不眠」市場と「快眠」市場というように二分化してしまえば、商材(きっと同じ商材)を「不眠」と「快眠」のレッドオーシャンに提供することになります。しかしその間に無理やり空き地をつくってみましょう。そこには「軽度で短期な不眠状態」というのが浮かび上がってきます。ここに命名した市場をつくってしまえば、その市場こそが、自分の商材が思い気ままに泳ぎ回るブルーオーシャンになるのです。たとえば、「軽度短期不眠状態」を「かくれ不眠」という具合に命名してしまう。そのブルーオーシャン市場を商標登録することも、ビジネス的にはアリ!ですね。

執筆者:西根英一(株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ 代表取締役社長、マッキャン・ワールドグループ 顧問、事業構想大学院大学事業構想研究所 客員教授)
編集人・編集責任者:武坂

西根英一氏

<プロフィール>
マーケティングデザイン開発とコミュニケーションデザイン設計の専門家。商品開発、サービス創造をはじめ、市場戦略、販路開拓、顧客獲得のための“精緻な設計図”を描き、広告プロモーション、戦略PRを最適化する。近著に、『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』(宣伝会議)。 大塚グループ、電通グループを経て、マッキャン・ワールドグループ。大手企業、全国の中小企業のヘルスケアビジネスをマーケティング戦略面からコンサルテーション、地方自治体の地域ヘルスプロモーションを支援する。各種研究機関の役員、委員も務める。大学教員(専門:ヘルスケアマーケティング、若者マーケット)。講演登壇、番組出演、教育研修の機会多数。