新ビジネスの種

  • HOME > 
  • 新ビジネスの種 > 
  • 新たな高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネスの可能性~顧客満足度を向上させて、口コミや入居率の向上につなげよう~

ライフサポート展2017

2015年11月17日

新たな高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネスの可能性
~顧客満足度を向上させて、口コミや入居率の向上につなげよう~

前月号「競争が激化する高齢者施設の集客・満足度向上支援の新ビジネス」では、サ高住(サービス付高齢者向け住宅、以下同)、有料老人ホーム等の民間が運営する施設における集客支援等のビジネスを紹介した。

高齢者施設向けのアウトソーシング・ビジネスには、それ以外にも、顧客満足度を向上させるためのサービスが存在し、昨今では新たなビジネスが登場し始めている。施設にとっては、口コミや評判を向上させて、結果的には、入居率向上や退去率低下につながるメリットがある。

また、国では、介護保険サービスに合わせて利用できる介護保険適用外サービス(全額自己負担)の範囲を2015年度中に策定する予定である。これによって、現在、利用者が混同する等の事情で積極的に勧められていない、あるいは、自治体によっては制限されている介護保険適用外サービスの利用が促進される可能性がある。ここには、外出の付き添いなども含まれ、該当市場は大きく拡大することが予想される。

今月は、顧客満足度の向上のための高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネスついて、さらに可能性を検討する。

※記事をご覧いただく場合は「詳しく見る▼」ボタンをクリックしてください。

1.高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネス
~出張高級すし店、介護度別カルチャースクール、変わり種、新種も続々登場!~

サ高住、有料老人ホーム等の高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネスといえば、まずは、運営効率を高めるための基本的機能に係る部分、つまり、給食、清掃、警備、リネン洗濯(消毒・滅菌等含む)等を想定することが多いかもしれない。しかし、昨今では、効率化とともに、サービスの質や顧客満足度を高めるための多様な委託ビジネスが登場しており、前回紹介した、営業(集客)支援以外にも、健康・美容・教養娯楽目的のサービス等が登場している。

<主な高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネスの例>

◆業務効率化
: 給食、清掃、警備、リネン洗濯(消毒・滅菌等含む)等

◆顧客満足度向上
○整容・美容 : ヘアカット、メイク、ネイルケア 等
○健康・リラクゼーション: 介護予防・フィットネス、フットケア、アニマルセラピー、マッサージ、アロマテラピー 等
○教養・娯楽 : 音楽鑑賞会、絵画教室、その他各種文化教室、移動図書館 等
○生活支援 : 外出・旅行や通院の付添い、清掃・洗濯・買い物代行等
○その他 : 出張レストラン、量販店・百貨店等の外商等

上記のうち顧客満足度向上のためのサービスの提供方法としては、アウトソーシングの他に、施設自らが提供する(図書館、美容室、娯楽室、プール等の設備がある、セラピー犬が常駐している、指導・提供できる職員がいる)やりかたもある。

ただし、施設で提供できても、品ぞろえや専門性といった質の点で、必ずしも入居者が満足しているとは限らない。外部に委託することで、よりレベルの高いものが提供されれば、さらに入居者の満足度が高まる場合もある。例えば、施設内に図書館や美容院、プール等を備えていたり、施設職員がトレーニングや文化教室等を提供している場合でも、新しい手法を取り入れた先進的なサービスや、著名な美容師やトレーナーによる付加価値の高いサービスであれば、まったく受託の見込みが無いわけではない。

効率化のためのアウトソーシングは、よほど有力な独自技術等によって差異化できる場合等は別として、大半は価格競争となる可能性が高いが、顧客満足度向上のためのものは、質を高めてブランドを形成できれば、比較的高額でも事業が成立する傾向がある。日常的に提供されているサービスにバラエティを持たせる目的で導入されることもある。そもそも、外部のボランティアを施設に呼んで実施する場合など、複数団体との調整等に係るスタッフの負担も大きく、質の担保された企業に委託することによって、それが軽減されるメリットもある。

例えば、普段から食事を提供している施設でも、週に1回、高級すし店が出張して握りを提供する(サクラビア成城)、ラーメン店が施設へ出張調理に行く(麺処そめいよしの)といった例がある。さらには、シニアや要介護者に特化した商品・サービスの提供も強みを発揮する。要介護者向けの温泉旅行商品(旅行業者が自社の社員と専属契約ヘルパーを同行させて、旅先における血圧計測や入浴介助等に対応)(秋吉)したり、カルチャーセンターなどで実施している、生花・フラワーアレンジメント・陶芸・茶道・書道・社交ダンス等のレッスンを、入居者の介護度などに合わせて施設内で提供する(みんかる、シニア生活工房)といったものも登場している。

アウトソーシングの方法にしても、設備等の事情があれば、出張型に限らず、委託先施設に送迎して通ってもらう場合なども考えられる。また、委託元の高齢者施設とサービスを提供する委託先が委託・契約するのではなく、高齢者施設は取りまとめ窓口になって、サービス購入や金銭の授受は、入居者が直接行う、連携のようなケースもあり得る。

ただし、実際の課金システムとしては、サービス利用ごとの都度払いよりは、「健康管理料」等の名目で最初から組み込まれている場合の方が多いように見受けられる。従って、営業先は、個人ではなく、施設が中心となる。顧客満足度向上の観点からは、単に、商品・サービスのクオリティだけではなく、それがいかに入居者を惹きつけるか、分かり易い・伝えやすい魅力があるか、集客につながるウリがあるか、運営の効率化やスタッフの負担軽減につながるか、といった点も重要となる。

当たり前のことで恐縮だが、サ高住と有料老人ホームではターゲット層の経済状態が異なる。有料老人ホームにしても、健康型、住宅型、介護付きなどでターゲットの身体状況*だけではなく設備・提供サービスも異なる。高齢者向け施設をひとまとめではなく、それぞれのターゲット像とそのニーズを具体的に設定する必要がある。

忘れてはいけないのが、住宅型有料老人ホームの入居一時金は数百万~数千万円であり、この市場は“プチ富裕層以上ビジネス”である。一般的なシニア層とは異なる価値観を持っている可能性もある。例えば、公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム入居意向者意識調査」によると、ホームへの入居を考えている人は、子や孫との付き合い方について「時々あって食事や会話をする程度がよい」と考える人が6割以上(61.2%)と最も多く、内閣府の調査結果(46.8%)よりも高い一方、内閣府の調査では33.1%と2番目に多かった「いつも一緒に生活できるのが良い」は、同調査では4.8%に過ぎない。

また、シニアの場合、個々の体力や機能、それらから生じる学習能力や会話のペース等の違いも大きく、1人1人の個性や意欲も含めて、最適なプログラムを組み立てる、個人レッスンが向いている側面もある。グループよりも多少高額だがゆったり受講できる、カルチャースクールの個人レッスン、個別トレーニング・リハビリ等も有望株と考えられる。

*:自立している入居者の割合は、介護付有料老人ホームで20.0%、住宅型有料老人ホームでは7.3%、サ高住では11.5%となっている。住宅型有料老人ホームの入居者は要介護3以上の要介護者が入居者全体の半数近くを占め、重度の要介護者の割合が高くなっている。(平成25年7月1日時点、公益社団法人 全国有料老人ホーム協会「平成25年度老人保健健康増進等事業 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業」)

2.高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネスの規模とは?食べていけるのか?

さて、高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネス市場の大よその規模感を施設数・人数等から拾ってみる。

まず、有料老人ホーム数は8,424件であり、そのうち、住宅型有料老人ホームが60.5%を占める。ホーム定員数は34万人超で、そのうち、介護付有料老人ホームが58.6%を占める。平均定員数は、介護付ホームが61.6人、住宅型ホームが28.1人となっている。(平成25年7月1日時点、公益社団法人 全国有料老人ホーム協会「平成25年度老人保健健康増進等事業 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業」)

一方、サ高住の件数は2,875件、住戸総数は88,536戸で、1物件あたり平均戸数は30.8戸となっている。(出所:上記に同じ)

これらを合わせると、施設数は約11,300件、入居者数は約45万人(サ高住については、92%の物件で単身入居者が80%以上であることから、入居者数を約11万人と推定)程度と考えられる。これは、医療施設における施設数(18万施設程度)の約17分の1、病床数(約170万床)では4分の1以上に該当する。この水準が多いのか少ないのかは判断に迷うところであるが、介護保険外サービス全体の市場を6,000億円程度と見積もっている例もあり、高齢者施設向けアウトソーシング・ビジネス市場がその何割かを占めると考えられる。

さらには、国では、2015年6月に介護保険サービスに合わせて利用できる全額自己負担の関連サービス(介護保険適用外サービス)を育成する方針を打ち出しており、サービスの範囲を定める指針を2015年度中に策定する予定である。現時点では、外出時の付き添いや日帰り施設での弁当販売といったものが想定されているが、ここまでに挙げた様々なサービス等にも範囲に含まれる可能性があり、そうなると、介護保険とともに要介護者に勧められることとなり、一気に市場が拡大することも考えられる。

イベント情報

高齢者施設周辺ビジネスへの参入
~課題解決新ビジネスの可能性とは!?

日時:2015年12月9日(水) 14:00~16:30
※詳細・お申し込みはリンク先よりご覧いただけます。

編集人:井村 編集責任者:武坂
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社