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諦めていた少額債権回収トラブルを、オンラインで解決へ

PROJECT
お金のトラブルをスマホ1台で解決するサービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」
COMPANY
株式会社AtoJ

諦めていた少額債権回収トラブルを、オンラインで解決へ

IT化の遅れが指摘される日本の司法。その中で、弁護士が民間でのオンライン紛争解決という世界のトレンドを日本でも実現。多くの人たちに新たなセーフティネットをもたらす。

紛争解決のために話し合いの場所を

― なぜ「One Negotiation(ワンネゴ)」というサービスを立ち上げようと思われたのでしょう。
森 弁護士として活動していく中で少額の金銭トラブルはなかなか法律による救済が届かないという実態に直面してきました。例えば20万円の賃金未払いが発生したとして、これを裁判で解決しようとなると、内容証明郵便の発送や裁判申立ての着手金だけで債権額を超えてしまいます。しかも裁判で勝てたとしても支払ってもらえる保証がない。紛争解決にコストをかけても、それに見合ったリターンがあるか、わからない。だから泣き寝入りというか、諦めるしかないケースが本当に多いんですね。
冨田 本来、訴訟提起というのは法的な強制力の発動なので、とても強い攻撃手法になります。日常生活でもそうですが、なにかトラブルがあったら、いきなり攻撃するのではなくまずは話し合いで解決しようとしますよね。この裁判に至る前の話し合いで解決できる場を用意しようというのが「ワンネゴ」なんです。
森 今、政府は、「成長戦略フォローアップ」 (令和2年7月17日閣議決定)を受けて、「ODR推進検討会」を設置する等して、オンラインで当事者双方の話し合いによって紛争解決をめざす裁判外紛争解決手続「ODR」を推進しています。「ワンネゴ」は、これを民間事業者の立場から実現しようとするものです。

4項目の入力だけですぐ交渉開始

― 具体的にどのようなステップで紛争解決をめざすのですか?
冨田 利用者は「ワンネゴ」のサイトにアクセスして、案件名、相手の名前、申立金額、連絡先の4項目を入力するだけで申立書が相手に届きます。申立後は、チャットツールのような画面で選択肢をクリックだけで交渉ができ、ここで双方が和解することもあります。和解に至らない場合には、弁護士資格を持つオンライン調停人とチャットやオンライン会議をすることで、合意をめざします。
森 もちろん「ワンネゴ」ですべての紛争が解決できると思っていませんが、強制力のない裁判外紛争解決手続ADRでも、これまで相当数解決されています。申立てを受けた債務側としては、無視して裁判になったらもっと面倒なので、ここで和解しておいた方が結局は得になる。債権側としても、交渉によって支払いが分割になったり、全額回収は無理だとしてもゼロよりは得になる。つまり紛争の双方にメリットのあるシステムなんです。


さまざまな弁護経験を持つ森氏(左)と冨田氏(右)

一般向けのユーザビリティを第一に考えた設計

― サービス開始までに苦労したことは何でしょう。
森 法務大臣の認証取得やシステム開発が大変でしたね。法律家が使う言語をきちんと理解してくれて、サービスの意図を的確に汲み取ってくれるエンジニアが入ってくれたのは嬉しかったですね。また、全体のデザインも重要でした。例えば訴状は記入場所や内容に暗黙のルールがあって司法関係者にはちゃんと“デザイン”されたシステムなんです。けれど一般の人には理解できないですからね。

冨田 一般の方に入力をしてもらうわけですから、分かりやすくなければいけない。また、届いた申立書を読む側も一般の方ですから、分かりやすく、不安を感じさせず、それでいて背筋を正してもらわないといけない。紛争解決に導くための適切な設計思想をもったシステムやデザイン。ディスピュートシステムデザインと呼ばれるこの複雑な設計を共に推進できるデザイナーが入ってくれたのもやはり重要でした。ワンネゴを実現するうえで、エンジニアとデザイナーはかけがえのないパートナーです。

ワンネゴが当たり前の世の中へ

― サービスの課題や今後の目標を教えてください。
森 まだローンチして1年も経っていないので、まだまだ検証段階で、一般の方が使いやすいようにユーザビリティを高めている状況ですね。見据える先としては、社会インフラとして広めていきたい。少し前のデータにはなりますが、医療機関の医療費の未収債権が年間373億円近くに上るというデータがあります。1件あたりは少額でも累積すると膨大な額になる。金銭トラブルなんて遭遇しないに越したことはないですが、もし困ったら「とりあえずワンネゴしとき」と当たり前に言われるようなサービスに育てたいですね。
冨田 「ワンネゴ」が当たり前になることは、社会にとってセーフティネットがひとつ増えるということ。つまり生活に新しい「おまもり」ができるということなんです。社名の由来である「Access to Justice」という概念があるんですが、一人でも多くの方が、必要とする司法に手が届くようなシステムにしたいと思っています。

日本発のODRサービスとして世界へ

― 今後の展望についてお聞かせください。
冨田 日本の社会インフラになった先はグローバル化ですね。ヨーロッパやアメリカでは既にODRが進んでいます。国境をまたぐトラブルでは、裁判では紛争解決が上手く進まず、消費者が泣き寝入りせざるをえないことが少なくありません。だから裁判外紛争解決が常識になりつつあるんです。アメリカでは大手のオンライン個人売買サイトがサービスにODRを組み込んでおり、その安心感が顧客満足度にも大きく影響しています。
森 企業間の国際的な紛争解決は、国際仲裁が主流です。また、国際調停も増えることが予想されています。ただ、いずれもまだコストが高い。「ワンネゴ」はそのコストの問題を解消できる可能性を秘めています。最近は京都に国際調停専門機関ができましたが、オンラインでの国際調停が今後重要になってくると確信しています。今後は国際調停も取り扱い、「ワンネゴ」が少なくともアジアにおけるODRの標準になればと思います。

― 大阪トップランナー育成事業に応募されたきっかけや感想は?
森 20年以上、弁護士業務を通じて日本全国のスタートアップを支援してきましたが、大阪のスタートアップ市場も盛り上げていきたいと考えています。ユニコーンをめざすAtoJが、大阪発スタートアップであることを示すためにも、トップランナーに応募することにしました。
冨田 いまはコーディネータの支援のもと、自治体を中心にニーズヒアリングを進めています。さまざまな候補をピックアップしてくれて助かっています。大阪発スタートアップとして、世界に飛躍します。

希望するマッチング&パートナー例

  • 医療法人
  • 大家、不動産管理会社
  • 住宅供給公社

企業DATA

オンラインでの紛争解決サポート

株式会社AtoJ
代表取締役CEO 森 理俊・代表取締役COO 冨田 信雄