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2020年9月15日

第1回  イノベーションは「新結合」でも「技術革新」でもありません!

しゅんぺいた博士の破壊的イノベーター育成講座

本連載では、読者の皆さんに、企業の生き残りのために死活的に重要な「イノベーションのマネジメント」について学んでいただくことで、皆さんひとりひとりが破壊的イノベーターとなり、地域や日本が一層活性化することを目的としています。

1. イノベーションは何のため?

「イノベーション・バイ・ケミストリー」(東レ)、「バリュー・フロム・イノベーション」(富士フイルムグループ)など、多くの企業がイノベーションをスローガンに掲げてめざしています。なぜでしょう?

それは、イノベーションによって企業は、①競争優位を得ることができるとともに、②周辺環境の変化にも適応することができるからです。

本連載では、読者の皆さんに、企業の生き残りのために死活的に重要な「イノベーションのマネジメント」について学んでいただくことで、皆さんひとりひとりが破壊的イノベーターとなり、地域や日本が一層活性化することを目的としています。しばらくの間、お付き合いください。

2. イノベーションは何と訳す?

さて、多くの企業がめざす「イノベーション」ですが、企業のメンバーに「イノベーションとはどういう意味ですか?」と尋ねると、ある方は「新結合だ!」と答え、別の方は「技術革新だ!」と言われ、また別の方は「社会を変えないとイノベーションではない!」とのたまい、十人十色の答えが返ってきて収拾がつきません。

このように、企業が目標として掲げている言葉「イノベーション」の意味が、社員の間で統一的に理解されていないようでは、およそイノベーションの成功などおぼつきません。

そこで、連載第一回目では、イノベーションという言葉の正しい理解をめざしましょう。

「イノベーション(innovation)」という英語は、「イノベート(innovate)」という動詞の名詞形です。そして、「イノベート」の語源はラテン語の「インノバーレ(innovare)」です。この「インノバーレ」という言葉の中には「in(~の方へ)」、「nova(新しい)」という単語が入っています。ですから、「イン・ノバーレ」とは「新しい方へ」=「何かを新しくする」という意味です。

「イノベーション」はその言葉の名詞形ですから、「何かを新しくすること」というのが本来の意味です。

さて、イノベーションに関する国際標準指針である「オスロ・マニュアル2018」によれば、企業のイノベーションは「プロダクト・イノベーション」と「ビジネス・プロセス・イノベーション」からなるとされています。

「プロダクト・イノベーション」は、「新しい(または改善された)製品またはサービスであって、当該企業における以前の製品・サービスとはかなり異なり、かつ市場に導入されているもの」です。

「ビジネス・プロセス・イノベーション」とは、「一つ以上のビジネス機能についての新しい(または改善された)ビジネス・プロセスであって、当該企業における以前のビジネス機能とはかなり異なり、かつ当該企業によって利用されているもの。」とされています。

先ほど私たちは、イノベーションは語源から考えると「何か」を新しくすることであると学びましたが、企業が「製品やサービス」を新しくすると「プロダクト・イノベーション」になり、「ビジネスプロセス」を新しくすると「ビジネス・プロセス・イノベーション」となるのです。

そして、イノベーションを生み出すことを意図した活動のことを「イノベーション活動」と定義しています。

著名なイノベーション研究者であるパビットは、 イノベーション活動を「『機会』を新しい(製品やサービスやプロセスの)『アイデア』へと転換し、さらにそれらが『広く使われるようにする』過程」であると述べています。

つまりパビットは、製品やサービス(やプロセス)の新しさに加えて、そのアイデアが顧客(プロセスの場合は社内)に広く受け容れられて「普及」し、企業に利益をもたらすこと、すなわち「経済的成功」がイノベーションには重要であると示唆しているのです。

イノベーション活動の第一段階は、顧客が叶えたいと思っているが、何らかの制約によって出来ずにいる「ジョブ(用事)」を見出し、それを解決するソリューションを考え出すことです。社内外の技術を統合し、提供すべき新しい「製品」や「サービス」、「ビジネスプロセス」のアイデアへと変換するのです。

イノベーション活動の第二段階は、こうして産まれた新しい製品やサービスやプロセスを、適切な価格やビジネスモデルを選び、各種マーケティング手法なども駆使して広く普及させていくことです。

私は、この一連のイノベーション活動を日本語に訳すのに、新しいアイデアを生み出す「創新」という言葉と、それを顧客に広く受け容れてもらう「普及」という言葉を組み合わせ、「創新普及イノベーション」としてはどうかと提唱し、多くの方からご賛同をいただいています。

いかがでしたでしょうか?
最初ですので言葉の定義をしっかりしておかなければならず、やや堅苦しくなってしまいましたが、お楽しみいただけたとしたら幸いです。

さらに勉強を深めたい方には、拙著『日本のイノベーションのジレンマ第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』が2020年8月25日に発売されましたので、お近くの書店等で手に取ってみてください。

玉田 俊平太 氏

<プロフィール>
玉田 俊平太 氏

関西学院大学 経営戦略研究科 副研究科長・教授  博士(学術)(東京大学)

東京大学卒業後、通商産業省(現:経済産業省)入省、ハーバード大学大学院修士課程にてマイケル・ポーター教授のゼミに所属、競争力と戦略との関係について研究するとともに、クレイトン・クリステンセン教授から破壊的イノベーションのマネジメントについて指導を受ける。

筑波大学専任講師、経済産業研究所フェローを経て現職。その間、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、東京大学先端経済工学研究センター客員研究員、文部科学省科学技術政策研究所客員研究官を兼ねる。平成23年度TEPIA知的財産学術奨励賞「TEPIA会長大賞」受賞。

著書に『日本のイノベーションのジレンマ 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』(翔泳社、2015年)、監修書に『破壊的イノベーション』(中央経済社、2013年)、監訳に『イノベーションのジレンマ』(翔泳社、2000年)等がある。