2013年3月19日
シニア向け健康・介護商材の購入を決定する娘
高齢になってくると、ただでさえ「面倒くさい」ことが増えて、情報入手力や行動力等が若いときに比べて低下しがちとなる。そこで、周囲にいる子供世代が頼りとなってくるわけであるが、特に、娘は息子よりも親の健康状態等に関心が高く、また、親から様々な相談を受けることが多いため、商品購入の際の意志決定にも関わっていると考えられる。また、この傾向は、高齢になるほど、健康状態が悪くなるほど、強まるようだ。
今月は、子供世代経由でシニア世代向けに商材を販売する視点について考える。
<参考とした調査の概要>- 調査名:「母親の健康と介護に関するインターネット調査」
- 調査主体:日本イーライリリー株式会社
- 調査対象:高齢の母親をもつ全国の45~60代の女性4,700名対象(47都道府県各100名)
- 調査時期:2012年6月実査
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1.親を気にかける娘は9割以上
電通「高齢の親を持つ子ども(45~64 才)の親の高齢化・介護に関する調査」によると、高齢の親を持つ人の9割以上が「親のことをきにかけている」。中でも「いつも気にかけている」人は38.8%に達し、また、その割合は、女性(46.5%)が男性(31.0%)を15%以上上回る。
同調査によると、高齢の親を持つ人の69%が日常生活上の相談を親から受けた経験があり、息子より娘に相談することが多いという。子の性別によって、相談内容に差異が表れており、息子はOA機器や家に関すること、娘はさらに広範に健康状態、ファッション等の購入や選択についてが比較的多くなっている。
それに対して、72%の人が親の消費に積極的に関与する意志を示している。親に勧めたい商品・サービスは「病院への送迎サービス」「低価格の民間介護保険」「緊急対応サービス」「食が細くなっても十分な栄養が取れる食品」「日常の家事を支援する家政婦派遣」等が比較的多く、いずれも3~4割程度の人が挙げている。
2.人事ではない介護、自身の生活への影響が心配な娘は6割以上
一方、娘に母親を介護することになった場合に心配なことを聞いたところ、「自分の生活スタイルを変えなければならないこと」が60.9%、「精神的な負担が生じること」が58.1%、「経済的な負担が生じる(お金がかかる)こと」が45.6%、「自分の自由な時間がなくなること」が40.3%となっている。介護そのものに対する不安よりも、自分自身の生活に精神的、経済的な影響を受けることへの不安のほうが高いことが分かる。
また、娘が母親の介護予防のために行なっていることは、「定期的に医者に診てもらうことをすすめる」44.5%に次いで、「適度な運動・ストレッチをすることをすすめる」が41.4%となっている。一方、「健康・病気に関する情報を調べる」は18.0%、「定期的に医者に付き添って行く」は14.5%と、自分自身が積極的に行動を起こしている人は少なく、「特に何もしていない」は25.7%と、4人に1人の割合となっている。
図表1 娘が母親の介護をすることになった場合に心配なこと(複数回答)
出所)日本イーライリリー「母親の健康と介護に関するインターネット調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
図表2 母親の介護予防のための対応策(複数回答)
出所)日本イーライリリー「母親の健康と介護に関するインターネット調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
まとめ
- 今回参考にした調査結果からは、シニア向け商材の購入に当っては子供世代、特に娘が決定に与える影響が大きいことが分った。ここから、シニア向け商材の販促の際には、高齢の親を持つ娘が目にしやすいチャネル(介護情報専用だけではなく中高年女性向け雑誌やサイト等も)に情報提供したり、娘が利用を望む商材を売り込むこと等もある程度有効と考えられる。
- また、高齢の親を持つ娘は、介護が及ぼす自身のライフスタイルや精神面への影響も心配している。要介護状態を予防する商材はもちろん、忙しい娘の役割を代行できるよう、娘とのコミュニケーションをシステムに盛り込んだ家事援助や身体介護、見守り等の商品・サービスや、娘の心配を緩和するための娘からの視点にたった情報提供等に対するニーズもあるはずである。
- 一方で、娘が親の心身の状態について正しい認識をしておらず、そのために対応が遅れている可能性を示す調査結果※もある。親世代の体調をモニタリングして分析・評価したり、それに対応した解決方法や商品を提案するサービス等に対する潜在需要もあると考えられる。
※例)母親の腰痛や姿勢の変化の原因が骨折であることを見過ごす娘が7割以上(日本イーライリリー「母親の健康と介護に関するインターネット調査」より)
- これまでも、離れて暮らす娘・息子に両親の見守り等を斡旋するサービスはあった。しかし、そのような心配をするのは、両親に何らかの症状が出てからという場合が多いと思われる。要介護の可能性等のシミュレーション等の機能を盛り込むことで、より低年齢の子供世代も介護予防商品・サービス販促のターゲットとなりえるかもしれない。
- 今回は、実の娘と母親の関係性が検討の中心であったが、息子と父母、嫁と義父母等の間における購入決定への関与や情報提供についてもビジネスチャンスが存在すると考えられる。
編集人:井村 編集責任者:瀬川
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社