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人の豊かな暮らし、農業の未来を創造していく、新機軸センサ

PROJECT
小型環境センサによる新市場創生
COMPANY
ホルトプラン合同会社

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

「小型環境センサによる新市場創生」という、未来への可能性を高く評価された御社のセンサ技術。その特徴、世の中にある既存製品との違いについて、教えてください。

私たちのセンサデバイスの最大のセールスポイントは、【小型】【軽量】【低コスト】であること、そして今まで設置や利用が難しかった場所や装置類に使用できることです。小型かつ軽量という点では、実際のサイズでわずか数センチメートル、重さは数10グラムと、世の中に数多ある同種のセンサデバイスとしては、最小・最軽量レベル。コスト面では、サンプル生産で1~2万円レベルですが、大量生産すれば、2~3千円以下のレベルでの提供も可能となります。もう一つ、高い耐久性があることから、設置場所や応用法が拡大させやすいということが言えますね。実際に環境センサとして、ここまでコンパクトで、安価なもの、ユニークな測定能力を持つものは、まだ世の中にもないものだという自信があります。
現在は、大手メーカー様が取り組みにくい物理現象を計測するセンサを中心に取り組んでいます。風速・風向・輻射熱計測用途のセンサをラインアップしており、既に導入いただいているお客様や、事業化、商品開発に向けた動きがあります。私としては、紆余曲折ありましが、このセンサの研究と開発をはじめてから10年を経て、2018年に大阪トップランナー育成事業の一つとして認定いただいたことは、うれしいことですね。

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

そのセンサデバイスを活用することで、いったいどのような“新市場創生”が可能になるのですか? 今実現しそうなリアル、将来的広がりについても教えてください。

身近な使用例として一番分かりやすいのは、空調機器などの運転効率化や冷暖房効率を高めるエネルギーマネジメント分野でしょうか。当社の小型環境センサを機器と組み合わせれば、ビルや住宅内の風の動きを容易に計測でき、得られたデータから、最適な温度管理、エネルギー管理を実現できますからね。他にも、ビニールハウスや温室、植物工場などでの農作物栽培のための環境管理といったことも可能で、光合成の増大や病害虫の予防にも応用できます。
新市場ということで言うならば、次世代社会の実現をめざして、政府が今掲げている未来社会のコンセプト『Society5.0』に向けての取り組み。これは一例ですが、街や建物、住空間などの様々な所にセンサを設置し、そこから得られるデータの活用などによって、効率的で快適な情報化されたまちづくり、『スマートシティ/スマートコミュニティ』を実現しようというものです。弊社では実際に、内閣府PRISMの予算を受けて、Society5.0に向けたセンサやセンシングの研究を推進した事があります。

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

小型化、高い耐久性など、大手でも実現できていない特徴を数多く持つ御社のセンサデバイス。そもそも開発のきっかけには、何があったのでしょう?

私はもともと20数年間、農業ICTの研究開発や事業化に携わってきました。その中で、温室の中では温度や湿度、風の強さなど様々に変化し、その影響で植物の葉の表面や植物群落周囲では、いろいろな環境変化や現象が起きていると予想されているのに、あまり数値化されていないし、学術的な研究も進んでいないという疑問があったんです。現在でも、気流の流れや、それが植物の光合成にどう影響しているか、病気にどう作用しているかなど、まだまだ分かっていることはそれほど多くありません。
また、大学の研究室などで、人工気象室を使った実験例はあるものの、農家さんのリアルな生産現場での計測は成されていない状況でした。ある時、農業系の研究所の先生と話す中で分かったのは、使いやすいセンサがどこにもないということ。「風速センサって、数十万円もするのに、1日、2日ですぐ壊れちゃって、使い物にならないんだよね」という話を聞いた時には、「そんなことがあるのか」と驚きましたね。栽培施設の中は、高温、高湿度、さらに空気中には、埃や、状況によっては農薬・薬剤が含まれている環境のため、当時のセンサは、すぐに錆びて断線して1〜2日で使い物にならないわけです。でも、測定原理を調べたら、意外と簡単だった。そしたら、自分で作れるのではと思ったことが、今の事業の原点です。

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

冒頭でも紆余曲折あったと話されていましたが、やはり開発は苦労の連続だったのですか? どういった苦労を乗り越えてこられましたか?

実際にセンサをつくろうと思い立ったのが10数年前。何年かアイデアを温めていた中、10年前に立ち上げた起業2社目の会社が、スタート早々に上場企業から出資を受け買収されました。大きな資金力や人的リソースも得ることができ、親会社、大手電力会社、建設会社、大手商社などが共同で、オール電化温室をベースとした大規模事業化を進めていくことに。その中で私が国の研究費で構築した新型の計測制御システムを中心に、未来型の栽培システムも実現しようとしたんです。でも、事業準備を進めていく最中、プレスリリース発表直前に、計画中止になりました…。2011年の東日本大震災の影響でしたので仕方ありませんが、残念な結果となりました。
そのタイミングで、上の方針により、事業の主軸がビル空調や住宅のエネルギーマネジメント分野に広げる事に。 そこから具体的にセンサの基礎開発を始めることになりました。その後、会社が親会社の意向で解散。最終的に2015年に、起業3社目、関わったスタートアップ企業としては5社目となる、ホルトプラン合同会社を立ち上げ、事業を継続しているところです。
自分達の会社ですから、何かに縛られることなく、自由な発想でやりたいことに邁進できる今は、苦労もありますけど幸せですね。

会社運営においていろいろある中で、最終的に苦労して開発した御社のセンサが認められた時の感動は、かなり大きかったでしょうね?

一例としては、ある大学の研究室からお声がかかった時でしょうか。 もともとその大学では、大手のセンサを使う予定だったそうですが、大手のセンサは、希望のサイズや性能を満たしていなかったことから、私たちの、まだ試作品だったセンサが採用されました。自分が得意とする農業分野ではなく、エネルギーマネジメントを研究する研究チームに採用されたのです。
私たちのセンサと大手のセンサに大きな差が出た理由。それは、発想の転換で、大手とは違う製造方法でつくっていたことが大きかったと思います。多くの大手企業が使うMEMS(Micro Electronics Mechanical Systems)という手法ではなく、より簡単でコストがかからない方法、他社ではやっていない方法を、私たちのセンサは採用していました。これは、大規模な開発コストをかける必要がなく、スピーディな開発を実現できます。なぜその方法を選択したか?というのは、もともと、開発予算がそれほど潤沢に無かったことも奏功しているんですけどね(笑)。
開発初期は自分で材料を買って来て、自らの手で材料に穴空けをしたり、ヤスリで削ったりして形を作り、基板にハンダ付けする形からスタートしました。今のような形で事業化にもつながっていることを考えると、大学研究室に採用され、キーデバイスとして実際に実験フィールドで研究に使われた時のことは、本当に感慨深いですね。

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

2018年の大阪トップランナー育成事業認定を受けたきっかけ、認定後の今についても教えていただけますか?

そうですね。最初は、現状のセンサデバイスを売る、いわゆるモノ売りをメインとした事業モデルを行っていますが、今後はデータを活かした情報ビジネスなど、新しい事業モデルを創り転換していきたいとの思いがありました。また、事業を大きく育てていきたいと思っていましたし、そのチャンスが巡ってきそうなタイミングでもありました。そこで大阪トップランナー育成事業の審査を受けるプロセスで、事業のブラッシュアップや客観的な視点から当社の立ち位置を教えてもらえるなど、色んなメリットがあることに魅力を感じ、参加しました。
実際に、色んなアドバイスを受けて、自分達では見えにくい、業界でのポジション、他業界・他社と比較しての差異などを再認識することができ、新たな視点を持てたことは、私にとっては意義深かったことです。
2018年の認定後は、活動意識も大きく変えて、ハンズオン支援を受けさせていただいている状態。具体的な動きとしては、新しい事業モデルづくりの課題抽出から、スタートさせているところです。担当コーディネータの方が、一緒になって考えていただける、悩んだら気軽に相談できることは、非常に頼もしく思っています。

新事業の創出や、市場開拓、新市場創生など、今も積極的な活動を続けておられますね。今後の展開としては、どのようなことを考えておられますか?

まずメイン事業として、センサデバイスを拡販していくことです。具体的な動きとしては、ある大手さんからリクエストを受け、装置組込用のセンサ開発が進んでいます。同時に、量産体制の構築も不可欠との思いを持って、パートナーとなる提携工場との関係づくりも強化しているところです。弊社はファブレスメーカーとしてのポジションで、これから増大が期待されるニーズに対応した体制づくりに注力しています。そして、ある装置の中に入っているセンサのメーカーとして、トップシェアを実現できたらと思っています。
もう一つは、私自身の原点であり、今もこだわり続けている農業分野の自動化ICT化で、日本・世界の農業に貢献する事業も加速させていきたい。そのために、センサから得たデータも活用した、新しい農業ビジネスも考えています。センサには、これから色んな可能性が広がっていると思います。従来にない新しいセンサが出来ると、今まで見えなかったものが見えてきます。これはとてもワクワクする事です。ますます様々なアイデアや意欲が出てきます。

小型・軽量・低コストの先進的センサデバイスで、居住空間・製造現場・農業分野などの快適な未来を創る。

最後に、数社の起業経験、スタートアップ事業に関わった経験から、次世代の起業家たちに向けて、何かアドバイスをお願いします。

私がこの分野に進んだそもそもの原点は、小さい頃に科学雑誌で見た「未来には、食料とエネルギーと環境が問題になる」という記事です。それが潜在意識に残っていたのか、大学の研究室では農業ロボットの開発や農業ICTの研究に関わり、それらが今のセンサ開発へとつながり、センサはエネルギー利用の最適化で使われ始めています。起業に興味を持ったのは、学生時代にアメリカの起業文化を知ったからでした。これまで、いくつかの会社・事業を立ち上げさせて頂き、チャレンジしてみたからこそ、皆さんにお伝えできるのは、事業を興し、難しいことを実現するのは、苦しい事もありますが、他では得られない面白さがあるという事。もちろん、継続して発展させていくことは困難がつきものですが、誰も経験しない事や、一般のサラリーマンが経験できない、ワクワクやドキドキを経験でき、自分の手で世の中に無い事業を育て社会に貢献する。これは、起業やスタートアップでしか得られない醍醐味です。
これから起業や事業を立ち上げる人にとって大切なのは、あきらめないこと。また、人生に無駄なことは何もないと考えて、焦らず、頑張ることです。その時に無駄だと思った事や経験が、後で意外な所で役に立つことが多々ある。そして、どうなりたいか、どうあるべきか自分自身が常に望む事です。そうすれば、きっと流れが自然と自分に向かってきてきて、おもしろい未来が開きますよ!

企業DATA

オリジナルセンサデバイスの風速センサ・3D風向センサ・輻射熱センサの開発供給及び、センサデバイスと環境制御システムを活用した農業ICTビジネス等を展開

ホルトプラン合同会社
代表社員・社長 林 泰正