AIによるデータ分析で大学と受験生のマッチングを高める
学生募集コストや退学率の増加などで悩む大学に、マッチング精度が高く、第一志望で出願する確率の高い学生への効率的アプローチを可能にするデータを提供。
AI分析で大学と学生をマッチング
― 認定プロジェクトとなった「MyREVO」というサービスの内容についてお教えください。
隈本 私たちは大学や専門学校など高等教育機関向けに事業を展開していますが、これは入り口となる学生募集の取り組み成果を高めるサービスとして提供しています。このため「MyREVO学生募集」という名称で表現しています。
今井 たとえば高校生が志望校を決めるとき、進学情報サイトなどを通して、まとめて資料請求する場合がほとんどです。すると大学側には、その学生がどれだけ真剣に興味をもっていて、どこまで教育カリキュラムを理解し、内容に適しているのかが分からない。つまりいくら膨大に学生たちのデータをもっていても、有意義なものは限られるわけです。
そこで年齢、性別、住所、学力偏差値といった基本的な情報はもちろん、オープンキャンパスなどでどのような接触機会をもったかなど幅広いデータを集めてAIにより分析します。
大きく変化する学生募集の環境
― 大学側は、具体的にどのようにデータを活用するのでしょう。
隈本 データ分析によって学生一人ひとりの出願確率が推測できます。そこから出願確率をさらに高めるためにどんなコミュニケーションが良いのかを判断してもらいます。リストが1万人だとして確率上位から10%まで絞り込めば1,000人が対象になり、それならDMが効果的かもしれない。さらに1%の100人まで絞り込めば個別面談シートによる綿密なコミュニケーションも実現できる。そういう形で大学には活用してもらっています。
― 大学にとっては受験者数を絞り込んでしまうことになりませんか。
隈本 大学のビジネススキームが変わってきているんですよ。昔は 1 月にセンター試験があり、2月に一般大学の受験シーズンでしたが、中小規模の大学では10月から総合型選抜や学校推薦型選抜と言われる年内受験の割合が増加しています。
今井 取引している大学の7割以上は年内受験が主流です。昔のように多くの受験者を募って受験料で稼ぐビジネスモデルは、一部の有名校以外では成り立っていないことが大前提です。入学後の授業料や在籍者数に応じた補助金で大学経営は成り立っているので、学生には4年間しっかりと通ってもらいたい。
そのためにもしっかりと自大学にマッチしている学生に入学してもらった方が経営は安定するわけです。
学生募集を成功させる新たな選択肢へ
― 「MyREVO学生募集」というサービスを起ち上げるきっかけはなんだったのでしょう。
隈本 以前リクルートに勤務していた時代、延べ350校の高等教育機関と関わった経験があり、有名校でなくてもすばらしい教育や人材育成をおこなっている大学が多くあることを知りました。しかし、大学の募集を好転させるパターンは、学部新設や入試制度の変更など大規模な改革か、大量広告の出稿というアプローチが中心でした。
人口ボーナス期を過ぎた今、こうしたアプローチは一部の余力がある大学しかできない。そこで第3の選択肢として、マッチング相性の良い学生をスクリーニングし、適切な情報提供によって学生募集を成功させるという方法を提示したかった。そうすることで魅力ある教育をしている大学に生き残ってもらい、学生側にも多様な選択機会を残したかったんです。
― システム開発において苦労したことはありますか。
今井 まったく新しいシステムなので、そもそも大学側も欲しいデータが分かっていなかった。お互いにコミュニケーションしながら手探りで完成形を追求していくしかなかったことが苦労した点ですね。当社の提供するAIの精度をより上げていくために、まだまだ多くのデータを学習していきたいのが現状なんです。しかし大学業務はまだまだアナログなので、ここからデータを増やすには大学職員さんの負担が増えてしまう。そこで、まずは環境をもっとデジタル化して、取得できるデータ増やしていきたい。そういったシステム以外の改善もあわせて取り組んでいます。
専門学校等への横展開や、大学入学後の学生のキャリアへのデータ活用も構想中
― 今後のサービスの発展や展開についてお聞かせください。
隈本 まずは、大学を経験や勘ではなくデータに基づいた募集意思決定ができる状態にすることをめざしています。その次はデジタル化によって大量にあった無駄を削減することです。ここまでは、もうすべてのお客さんに価値を提供できているかなと思います。そのせいか、既に想定以上の取引先を確保している状況ですね。
これからの構想は横と縦の展開を考えています。横の展開としては、大学だけでなく専門学校や資格取得系の講座などに広げていくこと。縦の展開としては、大学在学の4年間や、卒業後のキャリアまで幅広く活用できるデータ提供へと発展させていくことです。
今井 ひとつの課題として、入学前に蓄積・分析したデータが入学後のキャンパス生活とまだ連携していません。学生と大学それぞれにとって良い状態をめざすという意味では、入学後のカリキュラムや授業、教授といった コンテンツとの出会いも含まれると思うんです。大学と協力しながら、そうした部分も担えるシステムとして発展していくことが、ひとつの理想形かなと考えています。
希望するマッチング&パートナー例
- 定員2,000名以下の中小規模の私立大学のなかでも、一人ひとりに合わせた学びの実現をめざしている大学