2013年2月19日
「色」から考える高齢者向け製品開発のヒント~高齢者に使ってはいけない色、ウケる色とは?~
40代以降になってくると、目のかすみや疲れの他、ピント調節機能の低下等が気になってくる人は多いが、さらに高齢になると色の見え方までもが変わってくる。例えば、加齢に伴って、水晶体が黄色みを帯びてくる結果、黄色の識別が難しくなる他、青や緑は黒っぽく見えるようになるという。高齢者を対象にした商品開発やサービス提供では注意が必要だ。一方で、機能だけでなく、高齢者に好まれる色・嫌われる色など年代による嗜好の差異もある。今月はシニア層の色に対する見方を紹介する。
<調査概要>- 調査名:(株)シニアコム「色に関するアンケート」
- 調査対象:50代~80代のシニア層 1,357人(男性929人、女性428人)
- 調査時期:2012年5月
- 調査方法:WEBアンケート調査
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1. シニアは青や緑が好き、ゴールドは嫌い、男女で評価が分かれるピンク、オレンジ
シニアが好きな色としては、男性はどの年代でも、青、緑などの寒色系が上位に上がっている。中でも、男性70代以上は他の年代に比べて紺を好む人が多い。
女性は男性よりややバラツキが見られるが、どの年代でもピンクが最も高く、オレンジも比較的高いなど暖色系が好まれる一方、緑、青などの寒色系も上位となっている。女性70代以上では、他の年代に比べて、黒が高く出ている。
図表1 シニアが最も好きな色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
シニアが嫌いな色としては、男女ともに、どの年代でもゴールド、茶、グレー、紫が上位に上がっている。さらに男性はどの年代でもピンク、男性70代以上で黒が高く出ている。女性は、年代が上がるにつれてオレンジが高くなり、他の年代に比べて女性70代で黄、シルバーが高く出ている。
概して、「好きな色」として高く出ているものは、「嫌いな色」として低くなるという相反関係にある。
図表2 シニアが最も嫌いな色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
2. シニアが「格好いい」と思うのは黒、「格好悪い」のはゴールド、茶
格好いいと思う色は、男性70代以上以外は、黒が最も高い。男性70代以上は、紺、紫、青の順に高くなっている。男性50代と男性60代では、黒に次いで、赤、紺、女性50代ではシルバー、ゴールド、女性60代は紫、ゴールド、女性70代以上は白が高くなっており、性別や年代によってバラツキがある。
図表3 シニアが最も格好いいと思う色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
一方、格好悪いと思う色は、どの年代でもゴールド、茶が高い。男性はどの年代でもピンクも上位に上がっている。また、男性は年代が上がるにつれてグレーが高くなるが、女性は60代のみが高い。「格好いいと思う色」として高く出ているものは、「格好悪いと思う色」としては低くなるという相反関係にある。
「嫌いな色」として多く挙げられている茶、グレー、ゴールドは「格好悪いと思う色」としても高く出ている。ピンクも男性では「嫌いな色」「格好悪いと思う色」とともにの高くなっている。
図表4 シニアが最も格好悪いと思う色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
また、先進的(洗練された)と思う色は、男性は50代と60代はシルバー、白、70代は紺、青、紫と傾向が異なる。女性はどの年代でも白、黒、シルバーが高い。さらに、女性60代でグレー、女性70代以上でグレーと緑が高い。
「先進的(洗練された)と思う色」で挙げられた色は、「格好いいと思う色」でも挙げられる傾向が若干ある。ただし、黒は「先進的」より「格好いい」、白とシルバーは「格好いい」より「先進的」で高く出ている。
また、シニアが思う「格好いいと思う色」や「先進的(洗練された)と思う色」は、必ずしも好きな色ではない。
図表5 シニアが最も先進的(洗練された)と思う色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
3. シニアが見え難いグレー、黄色
最近見えにくい、見づらいと感じる色は、女性70代以上以外は男女とも、グレー、黄色が上位に上がっており、シルバー、白も比較的高い。他の年代に比べて、女性60代で紺、女性70代でシルバー、茶、ピンクが高く出ている。
図表6 シニアが最も最近見えにくい、見づらいと感じる色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
4. シニアの衣類は無難な色、携帯ではむしろビビットな色、メタリックもOK
所持している上着の色は、男性はどの年代でも紺が圧倒的に高い。次いで、黒、茶、グレーが高い。女性は、黒が圧倒的に高く、次いで茶、グレー、紺が高い。
男女とも上着の色は、「好きな色」、「格好いいと思う色」、「先進的(洗練された)と思う色」とはあまり関連がなく、選ぶ色の幅が広くない。紺、黒、茶、グレーなど無彩色に集中している。
図表7 シニアが所持している上着で一番多い色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
携帯電話の色で最もいいと思う色は、男性はどの年代でも、黒、シルバー、白が上位に上がっている。女性はどの年代でもピンク、シルバー、白が上位に上がっており、他の年代に比べて特に女性50代のピンクが高い。さらに女性は、黒が低く赤が高いなど、男性とは異なる傾向がある。
携帯電話の方が、上着よりも色の選択の幅が広い。
図表8 シニアが携帯電話の色で最もいいと思う色(単位:%)
出所)(株)シニアコム「色に関するアンケート」
まとめ
- 物や場面など何の想定もなく漠然と聞いた「好きな色」「嫌いな色」と、実際の商品やサービスに落とし込んだ際に好まれる色は異なる。例えば、選んでいる上着の色は紺、黒、茶、グレーなど無彩色が多く、「好きな色」、「格好いいと思う色」、「先進的(洗練された)と思う色」とはあまり関連が見られない。また、製品によっても異なる傾向が見られる。携帯電話では、「先進的(洗練された)と思う」白とシルバー、「格好いいと思う」男性の黒や女性の赤、女性の「好きな色」であるピンクが上位に上がっている。両者とも人から見られる、実用性とともに嗜好性もある製品という点では同じであるが、製品の大きさとともに、商品の訴求の方向性等が影響しているかもしれない。シニアにとって、衣類は流行を意識して頻繁に買い換えるものではない一方、携帯電話では、最新のものが良いという価値観が定着しており、時流に乗っていると感じさせる色が好まれているとも考えられる。
- シニア向け商品の色を検討する上では、上記の様な嗜好の他に、機能も合わせて考える必要がある。冒頭でも紹介したように、加齢に伴って、様々な色の見え方の変化が訪れる。水晶体の黄変によって視野が黄色がかったようになり、黄色等は見え難くなる他、瞳孔の大きさが小さくなることで網膜に届く光の量が少なくなり全体的に暗く見え、中でも、特に青色や緑色が特に暗くみえるという。これらの影響によって、商品のイメージが大きく変わってきたり、提供したい情報が届かなくなることも考えられる。商品のパッケージデザインや商品説明記載の際や、シニア向けに自社商品を目立たせてアピールしたい場合等には注意したい点である。
編集人:井村 編集責任者:瀬川
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
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